Sunday, July 25, 2010

世界報道写真展2010

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先週の話だが、今年の世界報道写真展に行ってきた。
東京会場はガーデンプレイスの東京都写真美術館で、会期は 6/12~8/8
http://www.asahi.com/event/wpph/

50年以上の歴史がある、アムステルダムの「世界報道写真財団」が、毎年世界中の報道カメラマンを対象に実施するコンテストの受賞作を紹介するもの。53回目となる今年は、128カ国5847人の写真家から10万1960点の応募があったらしい。副題は、「ある時代の、地球の記録」だ。

「一般ニュース」、「スポーツ」、「ポートレート」、「自然」など10の分野で審査がなされるが、今回の展示ではそれぞれの分野での入賞作品計200点ほどを見ることができる。ロイターとかAPとかのニュースで、この写真いいなと思うことがあるが、なかなかまとめて見ることはないので、普段とは違った写真の見方ができるかもしれない。

やはり内戦とか飢餓とか、そういったテーマの写真はインパクトがあった。写真というのは恐るべき力を持っているもので、無限に広がる3D風景から一つのカットを切り出し、また絶えず流れる時間軸を一つの面で切ったものだ。その瞬間に何が起きているのか、時として現実以上にメッセージを鮮明に写し出す。
写真家は常に、「そこ」にいるわけで、彼らがどういう心理状態でシャッターを切ったのか、そういうことも考えさせられる。歓喜の瞬間ならまだしも、惨事に直面したときに、第三者として写真を撮るというのはどういう気持ちなのか。その写真に写真家の気持ちがどのように表れているのか。一枚一枚考えさせられる。

また、こういう報道写真展のいいところは、普段僕たちが見ていないもの、あるいは、そういう観点が抜けているものについて、事実を教えてくれるところだと思う。実際に多くの発見があったし、気づいていない視点がたくさんあることを実感した。
個人的に非常に印象深かったのは2つ。
一つは食肉処理場で働く男と牛の写真だ。スーパーに売っている、きれいにパック詰めされた肉だけを見ていると、その肉が、つい最近まで確かに「歩いていた」、「顔のついている」牛のものだということを忘れてしまう。いや、考えないようにしているだけかもしれない。しかし、そこには必ず「その瞬間」があるし、それを仕事としている人がいる。僕らが見ていない「プロセス」の現実性をただ証明する。写真家のそんな意図を感じた。
もう一つは、ジンバブエの人々を時系列的に写した写真。倒れ横たわった象の周りを人々が囲んでいる写真が1枚目。最後にはほとんど骨だけになった象の写真。ジンバブエの経済がハイパーインフレで崩壊しているというのは誰でもが知っている。が、その土地にこんな事実があることを、多くの人は知らないし、わざわざ想像もしない。この写真からは、空間を越えて知らされるニュースや数字の後ろには確かに僕らと同じ現実世界があることを再確認させられる。

どちらかというとショッキングな印象を受けた作品についての感想を書いてしまったが、本展はそれだけではない。とにかく事実と新たな視点、それを得に本展に足を運んではどうだろうか。
 
 

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