Monday, November 26, 2007

未来バンクで考える環境とまちづくり

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今日は「細胞を創る会」なる学会で朝早くからお台場の科学未来館にはりつき、その足で夕刻からはとある勉強会に参加した。
「未来バンクの理念とまちづくり」という題目で、presenter は田中優さん。

田中さんは未来バンク事業組合理事長で、有名なのは ap bank の監事をやっていることだろう。

ECOLOGY ONLINE(参考):
http://www.eco-online.org/contents/people/11tanaka.html
ap bank:
http://www.apbank.jp/index2.html

今日のテーマも田中さんが常日頃考えて、取り組まれている内容そのもの。
お話の流れは、やはり環境やエネルギーの話、戦争の起こっている理由など地球規模のレベルから始まり、日本の地域、“まち”がこれからどうしていけばいいのかという話に帰結した。このトピックに対する田中さんの考え方や未来バンクのしくみについては至る所に掲載されているが、今日お話を聞いたことで、ある感覚というか考え方がスッと伝わった気がする。

田中さん自身が明言したわけではなくて、これは今日お話を聞いた上で僕が感じたことなのだが、地球規模での環境問題の改善を目の前の目的として据えることには無理があるのではないかということだ。
これは、もう地球は助からないという開き直りでもないし、環境問題から目を背けるというわけでもない。地球は今本当に危機的な状況にあるし、なんとかしなければいけないという心底の思いは絶対だ。だがその上で、目の前の目的をあえて地球規模の環境問題の改善とはしないというスタンスが感じ取れたのだ。

どういうことか?
もちろん僕なりの解釈なのだが、地球規模での環境問題の改善を眼前の目的にしてしまうと、実現可能性として正直苦しいところがある。だから、それを「結果」にすればいいと考えるのだ。何か、個人にも社会にもメリットとなることをした結果、それが地球規模での環境問題の改善になったという図式があればいいのだ。その「何か」というのが、今日のお話の後半のメインとなった、地域レベルで始めるエコ・システムおよび設備の導入なのだろう。田中さんの考える方法や未来バンクという仕組みを使えば、そうしたシステムや設備によって個人も得をできるし、地域社会も守れる。その結果、国全体としてもエネルギー消費を抑えられるし、戦争などへのお金の流出も減らせる。これが、田中さんが今日本の多くの人に与えている「気づき」だ。
こういうアプローチはいいと思うし、環境と正面から向き合おうとして上手くいかない今、意味のある取り組みだと思う。だからスッと伝わったのだ。

しかし、同時にこの問題はつくづく難しいとも思う。なぜなら、地球にあふれる人間の「個」がどこまでその流れを生み出せるのかという点に非常に不安が残るからだ。
田中さんは金融を支配する複利の仕組みを単利へと変えていかないと持続可能な社会にはならないと説く。そして未来バンク自体もそうした仕組みを目指している。ところが、現在の金融の複利システムは生活の隅々にまで浸透しきっているためなかなか大変なのだ。このシステムの下では未来のお金の価値はかなり小さくなる。現在の1万円と10年後の1万円ではまったく価値が違うのだ。
これによって、エコ・システムや設備は浸透しにくくなる。単利的に考えれば、さらには、未来のお金も現在価値に割引くことをしなければ、エコ・システムや設備によって個人は将来的に利益を得ることができる。例えば、初期費用のかかる太陽発電や省エネ設備は長期的に考えれば、光熱費の削減という利益を生み、これが個人にとって、システムや設備の導入に対する incentive となる。だが現在の複利システムの下、ファイナンス的な考えをすれば、将来生み出される予定のキャッシュフローは現在価値に直せばその額面からは想像がつかないほど小さくなる。この考えの下ではなかなか収益を回収できず、初期投資に踏み切れない人が多くなってしまう。

このような問題は今日は議論されなかったが、僕は大きな障壁になると考えている。
結果的に環境問題に対してインパクトを及ぼすためには、ある程度のスケールで社会や個人の変革が行われなくてはならない。しかし、大多数の個人に変革が起きるためには、相応の incentive が必要だ。これが NPO、NGO 的な活動で達成できるのかということに非常に不安が残る。
一部の人がいいことをやっていても、個をベースとして地球規模の問題に取り組む場合は大人数でやらなければ結果につながらない。

したがって、このような問題は、ビジネスの割合をどの程度にするのか?法律や制度でどの程度押さえるのか?などのバランスが要求される。個人の道徳心や意識に依存してしまうと、どうしても一部の人だけの取り組みになってしまい、地球を変えるだけの大きな渦は作れない。
本当に難しい問題だ…。
考えても考えてもどうすればいいのか分からない。

環境の話とは少し違うが、そういう意味でも前 entry の FreeRice の仕組みはすごいと思う。寄付をしよう!などと個人の意識に訴えなくても、自発的に大きな渦を作れる絶妙なシステムだろう。
 

Saturday, November 24, 2007

Free Rice

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「天才だ!」

そう思わずにはいられなかった。
この simple な仕組みにして世の中を変えうる…

"Free Rice" http://www.freerice.com/

というものを皆さんご存知でしょうか?
「自由米」。変な直訳をすればそんなところでしょうか。
しかし、これほど画期的なものは久しぶり。上手く続くかどうかなど細かいことは考えてはいないが、この一見何気ないアイデアを実現しただけでも賞賛に値する。

では何なのか、この Free Rice というものは?
サイトの説明を引用すると次のとおり。

About FreeRice
FreeRice is a sister site of the world poverty site, Poverty.com.
FreeRice has two goals:

① Provide English vocabulary to everyone for free.
② Help end world hunger by providing rice to hungry people for free.

This is made possible by the sponsors who advertise on this site.
Whether you are CEO of a large corporation or a street child in a poor country, improving your vocabulary can improve your life. It is a great investment in yourself.
Perhaps even greater is the investment your donated rice makes in hungry human beings, enabling them to function and be productive. Somewhere in the world, a person is eating rice that you helped provide. Thank you.

簡単に言ってしまえば、4択のボキャブラリー問題で正解すると、貧困地域に米10粒を送れるというものだ。
え?どうやって?と思うかもしれないが、仕組みはいたって simple!!
1問正解した後で問題の下部を見て欲しい。広告が貼られている。
この広告が正解するたびに次から次へと変わっていく。

広告主は世界中の解答者の「正解」によって、自社の広告を見てもらうことができるため、その広告費として、1人の正解1つにつき、米10粒分のお金を国連(United Nations)に払うのだ。そして UN がそのお金で実際に米を貧困地域に支給する。
この美しいほど simple な仕組み、いかがだろう?
つまりは、1問正解するごとに米を10粒送ることができるわけだ。

Win-Win-Win !!!

広告主は多くの人に自分の広告を見てもらえるし、解答者は英語のボキャをタダ(Free)で増やせるし、飢えている人たちは米(Rice)を食べられる。

天才!! ノーベル平和賞級の発明。
  
僕自身、自分の BLOG で Free Rice を紹介することは国際貢献の一つだと思い、今こうして紹介しているのです。
そして、昨日はさっそく自分でもやってみました。1000粒送りました。なんだかいい勉強したなって思えます。
ちなみに、ボキャのレベルは50段階あるらしく、3問正解すると次のレベルに上がれます。ただ、間違えるとまた一つ下のレベルの問題に…
辞書無しでやると、僕の場合レベル8とか9ぐらいの壁を越えられません。国際貢献しながら英語力をつけていきたいものです。

まだ先月始まったばかりの Free Rice
昨日までで、もう total で35億粒も送れたそうです。驚異的!
ロングテールな国際貢献。素敵ですね。
 
Let's try!!
 

Friday, November 23, 2007

MoMA

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表参道の GYRE (ジャイル) にできた MoMA Design Store にはもう行きましたか?

僕は11/2の open の前からこの store には非常に興味をもっていたので、もちろんもう行ってきた。
とりあえず2回足を運んだのだが、予想通り、そこにはフレッシュな刺激がいっぱいだった。店にいるだけで楽しいし、美しくて機能的な数々の goods を見ていると気分も晴れる。
MoMA Design Store はもともと日本では online 限定で手に入れることができた品々を実際に手にとって買うことができるように作られた、まさにファン待望の store なわけです。

MoMA はご存知のとおり、ニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art, New York)のことで、従来の美術館にはないようなものを扱う、まさに近代的な美術館。そこは時代と共に移り行く美の中心地であり、ピカソやゴッホから、建築、商品デザインまでその収蔵の幅は種類的にも時代的にも広い。
上の写真はついつい買ってしまった postcard で、もちろんMoMAの収蔵作品。
僕はルソー(Henri Rousseau)の絵が大好きで、特に、写真手前の“The Sleeping Gypsy”の世界観はたまらない。ルソーの絵に出てくる動物たちにはなんともいえない優しさと、「生」の感覚が満ちている。

MoMA といえば、僕は東京国立近代美術館(The National Museum of Modern Art, Tokyo)も国内の美術館の中ではとても気に入っている。木工をやっていたこともあり、特に工芸館が好きで、今年中に行こうと計画中だ。多くの人にこの MOMAT も訪れて欲しい。

右の傘はけっこう有名なスカイアンブレラ。

雨が降っても自分の頭の上は sunny day!



MoMA Design Store: http://www.momastore.jp/storeopen.asp?shopcd=11111

MoMA: http://www.moma.org/

MOMAT: http://www.momat.go.jp/


Wednesday, November 21, 2007

それは希望の光か、それとも奈落への一歩か?

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京大の山中伸弥教授らの研究グループが、iPS細胞を人の細胞で作ることに成功し、“cell”電子版で20日に発表した。同時にアメリカのウィスコンシン大のジェームズ・トムソン教授らの研究グループも“science”電子版でヒト由来の iPS細胞の作成を報告した。

<cell 電子版>
http://www.cell.com/

<science 電子版>
http://www.sciencemag.org/index.dtl

<cell より、論文>
“Induction of Pluripotent Stem Cellsfrom Adult Human Fibroblastsby Defined Factors”
http://images.cell.com/images/Edimages/Cell/IEPs/3661.pdf

これは生命科学の歴史的な進歩であり、医学という意味では世界中で歓迎される輝かしい実験結果だ。 しかし、僕はこの報告に恐ろしさを抱かずにはいられなかった。こんなにも早くこのときがくるとは…
山中教授らのグループがマウス皮膚細胞から胚性幹細胞に類似した万能幹細胞を誘導することに成功したという発表があったのは去年の8月だった。あのとき僕は、5年以内ぐらいにはヒト由来でもこの技術が成立するかもしれないという予感をもった。それがたった1年と少しで現実のものとなってしまったのだ。これには心底驚いたと言う以外ない。

万能細胞として以前から周知のものとなっていたのは
ES細胞:Embryonic Stem cell
であり、その名のとおり、受精卵に関係する。受精卵が胚盤胞と呼ばれる段階にまで発生したところで取り出し、フィーダー細胞という細胞と一緒に培養すると、内部細胞塊が増殖を始め、将来的に全身の組織に分化してゆく細胞集団となる。ここからES細胞ができあがる。つまりはES細胞を利用しようといっても、それは受精卵由来なので、将来の生命の素を利用するということとイコールになるのではないかという倫理的問題がすぐに浮かび上がり、再生医療への応用を期待されながらもなかなか進展が見られなかったのだ。僕個人の生命に対する考えは除いて、ここでは「受精卵由来」というのが主な neck になっていた。そこで当然考えられたのが「体細胞由来」の万能細胞だったわけだ。
体細胞というのは生殖細胞以外の細胞のことで、生命体を構成するほとんどの細胞のことで、ここから万能細胞ができてしまうほどお手軽なことはない。学校の基礎実験などで多くの人が自分の頬の裏の細胞を顕微鏡で見たことがあるだろうし、それを使うことには抵抗があまりないと思われる。そういう意味で、受精卵由来でない万能細胞の可能性を示した今回の研究はとてつもないインパクトをもたらすのだ。
山中教授らは、ES細胞のもつ「なんにでもなれる性質」はどこから来るのか、そして体細胞をそういう状態にするにはどうすればよいのかを考えた。ここでの key は「初期化」で、分化してしまった細胞を白紙に戻す方法はないのかと考えたのだ。卵子やES細胞に初期化因子が存在しているというのは既知であり、ここからさらにES細胞が持つ初期化因子の多くは、ES細胞の万能性を維持する因子や、ES細胞で特異的に働く因子であると考え、初期化因子の候補として24因子を選出した。これらの因子の中から4つの因子を組み合わせてマウスの成体や胎児に由来する線維芽細胞に導入することにより、ES細胞と同様に高い増殖能と様々な細胞へと分化できる万能性(分化多能性)をもつ万能幹細胞を樹立することに成功したのだ。これが去年の話でその万能細胞は
iPS細胞:induced Pluripotent Stem cell
と命名された。これは事実上、細胞の初期化因子の同定に成功したということだ。
そして今回の論文はそれがヒトでも成立したという報告だ。


確かに「医療」という positive な軸だけで判断すれば今回の報告は希望の光となる。最先端の治療を待ち望み、日々病気と闘う人は世界中にあふれている。そういう人たちの苦しみを取り除くための一助になれるというのはまさに研究者冥利につきるし、同じ人間という種として、仲間を助けようとする当然の流れだろう。今日まで発展してきた医学も薬学もそうだ。しかし、明確なラインはないにせよ、何か足を踏み入れてはならないような領域に近づいているというのは、これもまた多くの人が少しは感じることだろう。今がまだグレーゾーンなのかもうすでに黒の領域なのかは分からないが、白でないことだけは明確だろう。この技術を土台とすれば、自分用の新しい臓器をつくることもそれほど難しいことではなくなるかもしれない。アンパンマンの顔ではないが、「とりかえ可能」になるということだ。僕はこのような状態を、人類の「生」への欲求による自然な流れだとは完全には割り切ることはできない。たとえミクロな視点では人の「生」のためであり、多くの人が幸せになるとしても、人類全体というマクロな視点ではどうも受け入れがたいのだ。

僕には科学技術の進歩、特に医学、薬学の進歩というものに関しての自論がある。ここで述べるようなものではないが、バイオの研究者を志したが結局やめたことにも少なからず繋がっている。この先、医学・薬学がどのような進路をとり、社会がどのように変わっていくのか、個人的な期待と人類全体的な不安を持ちながら当事者とはならずに静観したいものだ。
 
 

Tuesday, November 20, 2007

家庭教師の品格・高校時代の懐古

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前回からまた同じ話題が続くが、僕は教育にはけっこう興味がある。
家庭教師も長くやっていたが、なかなかやりがいはあったし、たかがアルバイトという感じではなく本気でやった。

家庭教師を頼む親は様々だが、大別すると2つのパターンがある。藁にもすがる思いで頼む人と、我関せずといった感じで子供の教育を丸投げしている人だ。
塾や家庭教師の多くのアルバイト大学生にとって後者の親は非常に楽だ。教師として出す value もあまり求められない。生徒と楽しく時間をつぶせば一丁上がりという感じだ。実際にこのような塾講師・家庭教師は多いし、お気楽な丸投げタイプの親も多いので、教育産業は効率良く今日も動いているのだ。しかし家庭教師だけに絞ると、前者の親は少なくない。今日では塾がスタンダードなものになっているため、一番最初に家庭教師というオプションを選ぶ親はそれほどいない。もちろん僻地に住んでいて塾に通うのが大変だからという理由で家庭教師を頼む場合もあるが、いろいろ考えたが結局どれもダメで家庭教師を頼みの綱として申し込んだというケースが多い気がする。
この「ダメ」というのは、純粋に成績が伸びないということと、生徒や家庭に問題があって他の教育機関では机につくこと自体が実現しないという2つの要素がある。
つまり、家庭教師に求められる機能というのは主に次の2つだ。

①勉強を教えて成績を上げる役割
②家庭、学校など、生徒周辺の総合コンサルティング機能

これを踏まえたとき、藁にもすがる思いで家庭教師を頼んだ親にとって、アルバイト感覚の大学生家庭教師がやってくるのは悲劇以外の何物でもないのだ。
しかしこんな悲劇は日本中で毎日のように起こっているだろう。家庭教師の料金は1時間につき数千円から高ければ1万円を超えることもある。とんでもないコストの一方で、家庭側に教師を選ぶ権利はそれほどない。選べる、変更できる、といっても教師のデータもないし、本当に運否天賦の世界だ。
そして、さらに追い討ちをかけるように教師の当たりクジの本数は非常に少ない。
②の機能は教師の人柄ややる気次第であって、早い段階で見抜かなければならないところだ。意欲のない形式的な家庭教師に、煩雑な家庭問題を解決できる可能性はきわめて低く、おそらく成績は少しも上がらない。生徒周辺の問題に真摯に取り組み、生徒を attract できるかどうかというのは勉強を教える以前の問題だ。
①は、教え方の上手い下手の問題。教師のコミュニケーション能力が大事なのは言うまでもないが、教えるにあたって、教師自身がその分野をしっかり理解しているかどうかも重要なカギだ。
ものごとの理解というのは何段階かあって、自分だけが何とか理解したというレベルと、人に教えることができるレベルとの間には大きな差がある。逆もまた真なりで、上手く教えられないというのは自分の理解が足りないことを意味する。僕自身、理科系科目を教えるのは得意だが、語学となるとさっぱりで、何となくの指導しかできない。自分が訳せる英文でも、生徒がなかなか訳せるようにならないときは、教師の理解度が足りないというのが要因として大きい。
このようなことは数学や理科では顕著だ。もし何かの偶然でこの文章を読んでいる親御さんがいれば次のクイックテストを試してほしい。数学家庭教師の数学の理解度の指標になる。基礎の部分なのでこういう問いにすぐにうまく答えられない人ははっきりいって最低限の教える能力なし、といったところだろう。

<中学内容>
・絶対値の意味って?
・三角形の内角の和は何で180°なの?
・連立方程式の解は何で2直線の交点になるの?

<高校内容>
・複素数、虚数とは?
・三角関数の合成の公式、これってどんな意味?
・数学的帰納法って?

前回の entry でパターン学習で大学に入った人が多いことを書いたが、森のある一地点から別の地点までつくられた一本道で行くことに慣れてしまった人には、道から外れてしまったときの脱出方法がわからない。そういう思考回路がないのだ。だから生徒がどこが分かっていないのかが分からないという現象が起きる。これでは教えることはできない。僕は数学を教えるとき、自分で問題をつくってそれをやらせることが多かった。そしてどこでペンが止まるかを観察していた。生徒がどういう思考回路をしているか見抜き、まともに教えるためだ。生徒に問題集の問題をひたすら解かせて、自分はその問題集の答えを握り締めてボーっとしている教師…そのような家庭教師もこれまた悲劇だ。

高校理系の分野でもう少しレベルを上げると、けっこうキツイ質問が出てくる。
・ビブンセキブンって何の意味?
・行列とは?
・確率の「同様に確からしい」って?

これらの質問は正直、僕自身理解が足りないため、教えにくい。数学はもともと得意で、大学では微分積分学や線形代数を勉強したけれどもやはり本質的理解が足りない。もちろん、それなりに理解させることはできるけれども、ただでさえ手持ちの知識が足りない高校生に雲間から青空が見えるような劇的理解をさせてあげることは難しい。こういうところを上手く教えられるような教師にめぐり合えれば幸せだろう。
「同様に確からしい」は高校時代に教わった仙田先生も教え方は難しいと言っていたのを思い出す…。

教育関連の話題が続いたが、前回にひきつづき、自分は良い先生に教わってきたと思える。
前回の吉崎潤先生に加え、韮塚哲夫先生、仙田章雄先生、波田野公一先生、板谷大介先生…他にもたくさんの先生にいろいろなことを教わった高校時代は本当に貴重な時間だった。この entry で謝辞にかえさせていただきたい。


今の家に引っ越したときに、小さい頃大切にしていた1枚の紙が出てきた。数字に関する表で、億や兆、京に始まり、那由他、不可思議まで、大きい数がいろいろ載っていたものだ。小さい頃は親も知らないそういう単位を知っていることに密かな優位感をもったりしていて、大事な1枚の紙だったことを思い出す。その紙の右下に仙田先生の名前があったときにはびっくりした。気づかぬうちに、小さい頃に憧れた表をつくった人に数学を教わっていたとは…。運命ですかね。

   数とグラフの雑学事典―おもしろくてためになる
仙田章雄先生の著書。


国語はほとんど勉強しないで、寝たり、メシ食ったり…といったふざけた態度で授業を受けていたけど、板谷先生は個人的には名教師だ。よく「鬼が連体!」とか叫ばされたのを思い出す。
古典文法の変なおもしろおかしいペーパーを配られたのも覚えている。それがまさかこんなことになるとは…(笑)
http://www.kirihara-kyoiku.net/book/kokugo_0704_01.html

http://www.kirihara-kyoiku.net/book/kokugo_0708_01.html

  
板谷大介先生の著書。 イラストの顔がけっこう似ている。
 
以上、たまたま見つけたので紹介までに。
 

Monday, November 19, 2007

日本の初等・中等教育は資格学習化したか?

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前 entry のレビューに続いて、教育の話。
output を求めるアメリカの教育に比して、今の日本の初等・中等教育はどうか?

受験の末、大学に入った頃、僕はある種の「がっかり」感を覚えた。
世に技術を出したり新しい理論を考える立場である大学の理系学部なのに、こんなもんなのか?と感じたのだ。そしてその感覚は後になってもやはり気のせいではなく、現実のものだった。

僕の入った大学の入試問題の数学や理科は世間的に見ればけっこう難しい。
しかし、不思議なことに、これらの科目の土台がなくても入試にパスしてしまうという現象が起きる。 耐震偽装問題ではないが、基礎的な理解・思考に問題があるのだ。
まず、中学校の教科書レベルの数学や理科がイマイチ理解できていない人が散見される。高校の内容ともなれば、理解不足は顕著だ。それは散見というレベルではなく、どちらかというと学生のスタンダードなレベルはその辺りだ。中にはもちろん、脳内がどうなっているんだという天才タイプの学生もいる。努力も知らずに安易に天才といっては失礼だが、傍目からするとそう感じずにはいられないぐらい頭のキレがよく、やはり将来の日本の科学を背負いそうなタイプの人間だ。
入学前、僕はこういったタイプの学生が多くて、彼らのような人が研究者になっていくものだと思っていた。しかし、そうした人は実際はほんの一握りにすぎなかったのだ。

始めはみな入試の反動で学問を忘れて緩んでいるだけだと思っていた。
大学生は良く遊ぶ。この遊びは有意義で、そこからいろいろなものを吸収するし、過度にならなければモラトリアム期間としても良く機能する。自分と見つめあい、職業選択をじっくりできる期間となるのだ。
学生の立場でしかできないこともあまたあり、そういう意味で大学生活は素晴らしい。
ただその一方でいつになっても周囲の理系的リテラシーは感じることはできなかった。
大半の学生が研究室に所属する4年生になるまでまともな「実験⇒考察」という作業をしない。そればかりか研究室に入ってもその営みが必ずしもあるかどうかは疑問なほどだ。

何が悪いかといえば、個人は何も悪くはないし、その個人の集合が生み出す全体のトレンドがそうであっても悪いことではないかもしれない。ただ、日本の科学を支えてきた人、今活躍してる科学者・技術者の年代と比して、今の学生の学問に対する姿勢は非常に脆弱で、将来の日本が心配にも感じるのだ。
僕が学生に関して個人的に考える問題点は次の3つ。

①数学・理科の基礎的部分の理解に欠ける点
②学問に対する興味の薄さ
③問題を自分で設定できないこと

別にそれを全員ができる必要もないし、僕も全部OKなわけではない。だいいち、研究者にはならず、サッサとビジネスの方に足を向けてしまった身だし…。問題なのは、デキル人の割合が極端に少ないことだろう。
③は、すなわち「考察」ができないこととイコールだ。自分で問題を発見・設定することができないのだ。だからレポートは実験結果と「与えられた問題」に対する解答で終わる。与えられた問題に解答するには便利な図書館やネットがあるので、学生はみな文献を調べることは得意だ。答えが存在するし、本に載っているので簡単だ。しかし、いつになってもこれしかできなければ、新しいものは生み出せない。
教科書を読んで理解しているだけでは、少なくともその教科書の著者を超えることはできない。

ではそのような学生のルーツは何なのか。何がそうしたのか。
僕が思うに原因は大きく分けて2つだ。一つは根本的な教育の姿勢。アメリカ型教育に output の重視が見られたのに対し、日本の教育は input に主眼が置かれているという点。もう一つは社会の流れ。具体的に言うと、受験予備校のような一部の私立高校の存在と、早期からの塾教育だ。
前者は与えられた問題に対してしか「思考」できない頭を生む。後者はさらにその傾向を強め、思考回路を画一化する。ふつう問題を設定してから自分の答えに行き着く過程には何本もの道があり、それ自体に価値があることなのだが、こうした教育は最短の1本道しか提供しないばかりでなく、そこを通ることを強要する。さらに、情報やテクニックが溢れた時代では、学問に時間費用対効果を過度に求めるきらいがあり、ますます思考の画一化に拍車をかける。その結果学生は、自ら考えないパターン学習に慣れ、output の能力に欠けるようになるのだ。おまけにこのパターン学習は、基礎が理解できていない学生にも入試問題解答能力を生み出させ、彼らが基礎を理解できていないことを気づかせない。誰だって難関大学の入試問題が解ければ、自分は基礎ができていないとは感じにくい。

今お隣の韓国では入試や資格学習が白熱している。その度合いとくればもうすごい。世界でも韓国ぐらいだろう。子供が気が狂ったようにテキストを input し、大人になってからも、TOEICのスコアを追い求める。韓国の大手企業に入社する人はTOEIC900点が当たり前で、それ専用の塾もまた白熱している。だが、おかしなことに実際そんなに英語はできないという。日本の教育もややこれに似ているところがあり、初等・中等教育が資格学習に近いものになってしまったと感じずにはいられない。何か目的と手段を履き違えているような感がある。
韓国では来月に大統領選があるが、深夜まで塾通いが続くなど教育の過熱が問題となっていることに対し与党系の候補が大学入試を撤廃するという公約を掲げている。廃止までしてしまうのはどうなのか分からないが、その動向からは目が離せない。
日本も特に理科系の学生に関しては上述の①②③の問題を和らげることができるような教育を期待したい。 今注目を浴びている京都の堀川高校のような教育方法は僕は大いに支持する。探求科目と称された科目の研究分野をやっている生徒はその素養という点ではその辺の理系大学生を優に超えるだろう…。

ところで僕はというと、高校時代は非常にラッキーだったと思う。僕は自分の母校の精神や教育指針に誇りを持っている。最高の教育を受けたと思う。高校3年間の人生に対する寄与は計り知れない。特に物理の吉崎先生には感謝をしたい。 今思えば、入試の前に先生に頂いたアドバイスを全面的に受け入れていればよかったのだろう。多少の後悔の念はぬぐえない。
 

Friday, November 16, 2007

垣間見えるアメリカ的教育

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アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へ
<ゲーリーE.クレイトン, 大和総研教育事業部, 大和証券商品企画部>


原著は600ページ以上におよぶ、実際にアメリカで使われている教科書。
経済学の本と言えば、巷の書店にハードカバーの分厚い本が並んでいるという印象がある。そして中身を見ると、理系向き?と思えるぐらいの数式の羅列。

しかし、この本は違う。
中学生のわかるグラフぐらいしか使われていない。精密な理論よりも、成り立ち、概念を重視して経済学の体系的理解を目指すようになっている。

1冊でミクロ、マクロ、国際経済学をカバーしていて、入門書としては万人向けの良書だと思う。
体系的理解のみならず、この本では、アメリカの教育方法についても知ることができる。

「理解」
という現象がどのレベルのことを指すのか、という問題でもあるが、日本の教育のそれは非常に input に偏ったものであることは明らかだろう。
ところが、本書では input のみならず output を非常に大切にしている。
細分化された各章末には「クリティカル・シンキング」、「経済概念の応用」という2項目が設けられており、ともに学生一人ひとりが input した内容を自分の頭でよく考えるような仕組みになっている。

現代の日本とアメリカ。その社会、経済の違いはこういう教育方法の違いからも生まれているのだろう。
 

僕個人としては…
日々の生活で input は多い。しかし残高がやや多くてバランスが悪い。
output を重視しなければいけない。

しかし、と同時に、やはり弛まぬ input も必要だ。
賢者はこの両者のバランスが非常にいい。どっちが欠けても賢者にはなれない。
 

Thursday, November 15, 2007

scientific mah-jongg

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科学する麻雀 <とつげき東北>

発表当時は唯一無二の戦術論となった。
初めてこの本を見つけて手に取ったのは大学1年の頃。書いてあることはめんどくさくてまったく実践してなかったが、機会があって再びこの本をぱらぱらと読み直した。実戦は最近全くご無沙汰だけど、この本は非常に面白く、理系の人には?特に面白い内容だと思う。 普通、麻雀の入門書や戦術書というのは、そのゲームの確率的要素の大きさに比して、妙に感情的であることが多かった。 「ド基礎」のパターンを除いて、プロ雀士には各々の経験に基づく指標のいうものが備わっていて、そういったものを紹介することが、戦術書を書くということとイコールになっていた。 いわゆる「流れ」や「ツキ」というものでさえ、まことしやかに戦術のように書かれている。 確かに、運の太い人もいれば、流れを読む力がずば抜けている人もいる。長期的にはそういうヤツには到底勝てない。これはもう確率うんぬんじゃないと思う。個人的に。。 しかし、では普通の人が勝率を底上げするにはどうすればいいか?それは統計的基礎を叩き込むことではないかと思う。 そういった視点では非常にためになるのが本書。 ページをめくれば、おびただしい数の統計データとグラフがならんでいる。 著者は?というと、東風荘では有名な、かなりの実力者。 しかし、その強さは本当に神がかった人の強さではなく、人間が「頭脳」によって理論的に達することのできる強さではなかろうか。

ちなみに、とある麻雀の強い人にこの本を知っているかと聞いたことがあったが、即答。
「あれは現代麻雀の基礎でしょ」
どうも勝率が低いという人は、読んでみては?
ちなみに僕は、この戦術論を一切覚えてません。やはり覚えるのがめんどうなので。
 

Wednesday, November 14, 2007

for a change

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息抜きに、この2冊。

①東京インテリアショップ〈2006-2007〉インテリア好きのための最強バイブル!

非常に便利。そしてパラパラと読んでいても面白い。
インテリアショップを回るのは楽しい。しかし、服屋同様、その数は相当なもので、歩いても歩いても目的にあったショップにめぐり合うことができないことは多い。そして利用するショップが次第に固定されていく…。
お気に入りのショップはもちろん誰にだってあるものだが、多くの店を知っていることで、選択肢は広がり、楽しみも増す。
何気なく歩いていて自分の感性にどんぴしゃりなショップを見つけたときの感動とくれば、それは大きい。しかし考え様によっては、エリア感を掴んだり、時間が無いときの秘策として、こういう本を1冊手元に置いておいても便利なんじゃないかと思う。


②CD-ROM付きで簡単・便利! 理系のためのフリーソフト

今この世にフリーソフトというものはあまた存在する。
まさに玉石混淆で、まったく使い物にならないものから、かなりのクオリティのものまで…
「玉」を探し出すのは大変なわけです。
本書はそのなかでも、理系の学生が使いそうなソフトでクオリティの高いものを集めてあるわけだが、文書管理や画像処理ソフトも入っているので、一概に理系向きとは言えず、一般の人でも十分楽しめるだろう。
OpenOffice や gnuplot といった超有名どころから、こんなものもタダであるのか…というマニアックなものまで。

しかし、買ってはみたものの個人的にはあまり実用としては使わなさそうです。あくまでも、趣味・息抜き用に。。
 

Tuesday, November 13, 2007

Finance をやる前に…

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①ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 <石野 雄一>

下馬評が良かったので購入。レビューの評価というのはけっこうアテになるものだ。
「ざっくり」という言葉がなんともGOOD!
内容はというと、本当にざっくりとファイナンスの考え方が分かるようになっている。ここまで簡単に書かれた本もなかなかないのではなかろうか。職種がどうであれ、ファイナンスの感覚をもっておくことは非常に重要であると思う。 ある程度勉強した方を除いて、多くの人にオススメできる一冊だと思う。 サクッと読めます。

②サバイバルとしての金融―株価とは何か・企業買収は悪いことか 
 <岩崎 日出俊>

「サバイバル」
どういう意味でサバイバルなのかは、少し読めばすぐに分かる。
金融の仕組みも複雑化し、その存在意義すらも多くの人にはわかりにくくなってきた。そんな時代に、金融のしくみの根本を理解し、社会現象をとらえていきたい。そうしたことが本書の目標であり、「サバイバル」の意味するところなのだろう。 著者は興銀に長く勤めた後、MBAを取得し、JPモルガンやメリル、リーマンといった外資系の金融機関を渡り歩いている。金融業界にしかいないともいえるが、その業界の中ではいろいろな視点で、そして長く金融の仕事にコミットしてきた人だ。 そんな著者だからこそ、多くの人に金融の根っこの部分、誤解してはならない部分を語りたかったのだろう。 ファイナンスに関する解説の部分は①とかなり重複しているところがあるが、この本もまた分かりやすい。
 

Monday, November 12, 2007

An Inconvenient Truth

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An Inconvenient Truth: The Planetary Emergency of Global Warming and What We Can Do About It <AL GORE>

ちょうど読んでいる最中に、ゴア氏のノーベル賞のニュースが入ってきたのには驚いた。
正確性などの部分で今なお物議を醸している面はあるが、そんな細かいことを抜かして、大事な本。そして歴史的な本であることは間違いない。 今更?という感じかもしれないが、こういう大事な本は原著で読みたいと思い、購入。
GORE氏の

We have everything we need to begin solving this crisis, with the possible exception of the will to act. But in America, our will to take action is itself a renewable resource.

という言葉から始まり、 軍人OMAR BRADLEYの

It is time that we steered by the stars, not by the lights of each passing ship.

という言葉で終わる。 この最後の短いフレーズがなんとも深い。 本を読み終えた上で、各自が真の意味を解釈すべきだろう。 多くの美しい写真が載っているが、この美しさによって逆にまざまざと「地球」ついて考えさせられる。 説明は簡潔に、ふんだんにチャートを用いてあって、誰にでも分かるように書かれている。 この本は世界中の多くの人に読んで欲しい本ではなく、地球に住む人間が読まなければならない本だと思う。

以下、印象の強かったフレーズをいくつか pick up したいと思う。何を意味している言葉なのか、各自が写真を見て、チャートを見て、感じて欲しい。どれも当たり前のようで、大事なこと。

P100,101
The era of procrastination, of half-measures, of soothing and baffling expedients, of delays, is coming to its close. In its place we are entering a period of consequences.

P196,197
The maps of the world will have to be redrawn.

P209
Is it possible that we should prepare for other serious threats in addition to terrorism? Maybe it's time to focus on other dangers as well.

P214
We are witnessing an unprecedented and massive collision between our civilization and the Earth.

P254
And the first problem in the way we think about the climate crisis is that it seems easier not to think about it at all. One reason it doesn't consistently demand our attention can be illustrated be the classic story about an old science experiment involving a frog that jumps into a pot of boiling water and immediately jumps out again because it instantly recognizas the danger. The same frog, finding itself in a pot of lukewarm water that is being slowly brought to a boil, will simply stay in the water―in spite ofthe danger― until it is…rescued.

P266,267
It is difficult to get a man to understand something when his salary depends upon his not understanding it.

P286
The truth about the climate crisis is an inconvenient one that means we are going to have to change the way we live our lives.

P300
It is our time to rise again to secure our future.

P319
Be a catalyst for change.
 
 

Sunday, November 11, 2007

Suddenly an idea came to me.

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一番最近買った楽譜が↑の<パデレフスキ編 ショパン全集XI >で、けっこう好きな3曲が入っている。最近はピアノを弾く時間もめっきり少なくなり、なかなか指も昔のようにコントロールできないけれど、たまにこの楽譜も弾く。

今日もたまたま「舟歌 Op.60」を練習してたのだが、気づいたら弾きながらまったく別のことを考えていた。手は動いているのだけれども、音は完全にバックミュージック化し、なんだかよくわからない状態。
しかし、僕はこのような状況において、突然の閃きを得ることが少なくない。
今日はまさにそれだった。長らくつかえていた問題に対する一つの解決法が突如閃いた。灯台下暗しとでもいえるような、思わぬ簡単な解決策…

どこかの本でも読んだことがあるような気もするが、relax した状態で芸術に触れているとき、脳は意外な解放を得るようだ。左脳的に考えてもなかなか糸口がつかめない問題に対して、脳に電撃が生じ、瞬く間に解決してしまう。まったく脳の働きは奥深く、興味が耐えない。

閃きが起きたのは良かったが、、、もう少し3度の trill がキレイにいかないものか…
舟歌しかり、幻想ポロネーズしかり…
 

Saturday, November 10, 2007

人気作家より

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①チルドレン <伊坂 幸太郎>

5つの短編からなる物語。
陣内という豪快で独特の信念を持った男を、その周りの人物の視線で描いている。
この陣内という男、現実の世界にはなかなかいないタイプ。しかし、何気ない情景の中に溶け込んでいて何故か身近に感じてしまう。
5つの話それぞれでなんだかスカッとする。
そういう男だ、陣内は。

スルッとこの本の世界に吸い込まれていった。
素直におもしろいし、なんだかほっとする。

②分身 <東野 圭吾>

自分とまったく同じ容姿の人間がこの世にいたら…
女子大生である双葉がアマチュアバンドのボーカルとしてテレビに出演したことで歯車は回り始める。

双葉と双葉に酷似した、いや、ほとんど同一である鞠子の母親は2人とも謎を秘めた死を遂げる。
2つの死の因果関係は?
母の想いは?
2人はどこからやってきたのか?
すべての答えは20年前の北海道にある。
双葉と鞠子、2人の視点で物語はパラレルに進んでいく…

現代医学、バイオテクノロジーに警鐘を鳴らすかのような本作品。どんどん引き込まれていくこと間違いない。
医学やバイオに知識があって、読み始めてすぐに話の仕組みがわかってしまっても、そのカラクリだけの物語では決してない。
それが東野圭吾の力量なのだろう。

Friday, November 09, 2007

作文技術の古典

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理科系の作文技術 <木下 是雄>

再版を繰り返し20年以上に渡って読みつがれている名著。バイブルとしても多くの人に知られているこの本だが、実は高校の時に買わされて以来、家に眠っていた。
改めて読んでみるとやはり素晴らしい内容だった。理系の人間はもちろん、「仕事」としての役割をもつ文書を作成する全ての人に大いに役立つ内容となっている。

文書作成の基本的な部分として
・論理展開の順序
・パラグラフの機能
・簡潔な表現
・逆茂木(さかもぎ)型文章

特に理系の「仕事」について
・記号、漢字、言葉づかい、単位、表記、文献引用

・日本人が多用する「~と思われる」「~と考えられる」といった受身形の表現について。
⇒筆者はこのような表現を責任回避の逃げ言葉だという。引用すれば「当否の最終的な判断を相手にゆだねて自分の考えをぼかした言い方」ということだ。

・意見と事実を書き分けるのは非常に重要で、レポートの主体は事実であること。
⇒ここで筆者は意見とは次の6つからなるという。
①推論(inference)
②判断(judgement)
③意見(opinion)
④確信(conviction)
⑤仮説(hypothesis)
⑥理論(theory)

他にも、図表の話やプレゼンについての指南が記されている。
バーバラ・ミントの「考える技術・書く技術」とセットで読むとなおいいかもしれない。

両者の根本的主張は同じ。
すなわち、「仕事の文書」は読み手のためにあるものであって、自己満足のための文章ではないということだ。読み手が内容を理解するのに要する時間を最小化することは書き手の大きな仕事なのだ。
 

Thursday, November 08, 2007

文章を書く

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①考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則
<バーバラ・ミント,グロービス・マネジメント・インスティテュート,山崎 康司>


ビジネスライティングにおける古典。
著者はHBSの卒業生でマッキンゼーのコンサルタントだったが、その後、世界の様々な企業でビジネスライティングを教えている。
この本、世界中で読まれているだけあって、非常に基本的で重要である「考える」と「書く」ことに焦点をあてて徹底的に解説してある名著。
「考える」ことと「書く」ことを常にセットで教えることで両方にシナジーを生むのだろう。

正直言ってレベルは高い、理解するのはなかなか大変だったし、読むのに非常に時間がかかった。
ビジネス文書を大量に書くようになって初めて生きてくるのだろうから、しばらくしたら再読しようと思う。
とりあえず、文章を書く人すべてが手元に置いておきたい一冊。

②日本語練習帳 <大野 晋>

名著。
こちらのネームバリューはどれほどなのか知らないが、隠れた名著だと思う。
確か高校のときに学校で買わされ、ほとんど読まずに眠っていた本。
軽い1冊ではあるが、これもまた日本人の誰の手元にあってもいい本だろう。

英語の文法を基礎からやるように、正しい日本語について学べる数少ない本だと思う。
日本人なら1回読んでみてください。
 

Wednesday, November 07, 2007

Consulting Firm

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①外資系コンサルの真実―マッキンゼーとボスコン <北村 慶>

マッキンゼーやボストンティンググループという名前は知っているもののコンサル業界については知識がゼロ!という人向け。
ある程度業界を知っていたり、かかわってたりする人には退屈な内容だと思う。 買う必要はあまりなかった。
コンサルに興味のない人には意外な面白さがあるかもしれません。
ただ、この業界については、インターネットでもかなりの情報が集められるし、この本の価値がどれだけあるのかというと分からない。
とにかく、M&Aの裏には投資銀行がいるのと同じように、大きなプロジェクトの裏にもコンサルティングファームがいることが多いということを世に知らしめる内容。
 
②実戦!問題解決法 <大前 研一, 齋藤 顕一>

この手の本としては極めて平易な部類に入る。 正直、あまり読む意味もなかった。
表紙だけ大それたものになってるけど、大した内容じゃないし、ほとんどビジネス・ブレークスルーの宣伝のための本。 付録CD-ROMも無用。 大前研一というのも名前だけ。大前さんがこの本のうちどのぐらいの割合を執筆したのかも謎。
まぁしかし、間違ったことは書いてないとは思う。
「問題解決」といった類の本を初めて手に取る人にはいいかもしれない。 超初心者向け。
内容は少ないので、通読して頭に残らないということもないだろう。
 

Tuesday, November 06, 2007

マイクロソフト × 電通

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①ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか? 
 <ウィリアム パウンドストーン, William Poundstore, 松浦 俊輔>

これは面白かった。 「面接試験」とは書いてあるけど、就職活動等の面接にはあまり関係なく誰でも楽しめる本だと思う。しかしコンサルティングファームの面接はこんな感じですが…

昔からこの手の本は好きで、論理パズル、科学パズルなどはやりだすと止まらない。そして答えがスカッと出てきたときの感覚はIQサプリのそれをはるかに凌駕する。

<帯に載ってる問題例>
・太陽は必ず東から出ますか?
・ミシシッピ川の1時間の最大流水量は?
・時計の針は1日に何回重なるでしょう?
・世界にピアノの調律師は何人いますか?
・マンホールの蓋はなぜ丸いのでしょう?

問題はたくさん掲載されていて、錆び付いた頭に油をさすならちょうどいい本だろう。
また、こういう面接を始めたマイクロソフトという企業に興味がある人にもオススメ。面接の背景的なものも非常に面白い。

②電通「鬼十則」 <植田 正也>

電通の鬼十則の英訳版はGE社内にも掲示されているらしい。
時代背景は今と異なるのかもしれないが、言ってることはどれも間違ってないとは思う。
ただ、自分の中で絶対的なものに崇めようとまで思わない。
あまり感動なくさらりと読んでしまった感じの本。

非常に薄い本だし、自分に渇をいれたい人は手にとって見るのもいいだろう。
 
ちなみに著者は電通出身じゃなく、ただの電通崇拝本ではない。
 

Monday, November 05, 2007

マーケティング&リーダーシップ

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①実況LIVE マーケティング実践講座 <須藤 実和>

マーケティングが専門じゃない人向け。 わかりやすい!
サントリー「DAKARA」のケースをはじめ、身近な具体例も盛り込まれていて、基本的な考え方がよく身に付く。 そしてマーケティングがおもしろくなる。

読みやすいのでスイスイいけます。 おススメです。

②実践的リーダーシップの鍛え方 <堀 紘一>

なぜか発売した直後に買った気がする。
DI創設者の堀さんの本。 この人の本はけっこうどれも同じことを言ってる気もするが、この本もなかなか堀ismといった感じ。
ただ、特殊な業界に身を置く人の本なので、読む人すべてに当てはまるとは到底思えない… しかしまぁそれなりに面白いのだが。

DIというのはいい会社なんだろうな…と読み手は自然に思ってしまうことだろう。
そんな堀さんには、その頭の良さだけでは決してなく、情熱で人を巻き込んでいくようなリーダーシップがあるに違いない。
 
僕が言うのはおこがましいが、DIには是非とも日本を良くしてもらいたい。
 

Saturday, November 03, 2007

地下経済とグレーな話

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①こっそり儲ける経済学―人には教えたくなかったおいしい仕事の秘密 
 <門倉 貴史>

地下経済、セックス産業についての著書も多いエコノミスト門倉さんの本。
今回はグレーなビジネスを中心に、街中にあふれるビジネスについてもその儲けのカラクリはどこなのか解説している。
……が、正直内容はけっこう浅い。統計資料さえ手に入れれば、学生でもできるような市場規模の算出と、誰でもある程度想像できるようなビジネスのしくみ解説に終始していた。
非常に真っ当に生きてる人たちには「こんな裏があったのか」と興味をそそる内容かもしれないが、基本的にそんなに目新しい内容ではないです。
読みやすいのは読みやすかった。サクっと暇つぶしにでも。

②図解 裏社会実態マニュアル―自己破産、マルチ商法からドラッグ、密輸拳銃流出まで  <加藤 亮介>

①よりもっともっと「地下」に行った感じの本。
以前読んだのを引っ張り出してきてパラパラと読んだ。 なかなか詳しいが、ちょっと眉唾モノで、レベルとしてはSPA!や宝島って感じかな…その分読みやすいけけど。

こっちの世界について「世間知らず」の人はこういう本でも読んで知識をつけとくことが「防御」につながります。
第1章 「借金」にハマる!!
第2章 「女」にハマる!!
第3章 「売買・契約」にハマる!!
第4章 「暴力」にハマる!!
第5章 「ドラッグ」にハマる!!

最近ワイドショーで、日本の多重債務者(5社以上に対して債務がある人)は200万人~300万人いるという話を聞いた。これには正直おどろいた。
50人に1人は多重債務者…そんな現実を信じられるだろうか?
自分の身は自分で守らなくてはならない。

 

Friday, November 02, 2007

The 7 Habits of Highly Effective People

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7つの習慣―成功には原則があった!  
<スティーブン・R. コヴィー, ジェームス・スキナー, 川西 茂>

自己啓発書、ビジネス書というジャンルでは現在最も売れているものの一つ。

ゆっくりと通読してみての感想は
「まぁフツーにいいことが書かれている本」
という感じ。
世を出回る自己啓発書には「7つの習慣」の各習慣について部分的に pick up して掘り下げたり、もしくはおかしな方向にもっていったりしたものが多い。 いや、ほとんど。
この本が絶賛されるのは、それを体系だてて、無駄をそぎおとし、シンプルにかつ、具体例を入れて読者に響きやすくまとめあげているからだろう。
500ページほどあっても、誰でもスラスラ読み返せるような軽さというのも、この手の本には重要な要素かもしれない。

ただし、自分としては、一つだけしっくりこないところがあり、100点満点でいうと90点は超えないという感じだ。
というのも、本書における「成功」という言葉、概念が非常に鼻につくような、うっとうしいような…そんな感じがあるからだ。

これについて個人的には以下の2つの信念がある。
・「成功」の定義は万人に共有され得ない。
・「成功」は結果であって目的ではない。

⇒訳者のせいなのか、もともとのニュアンスとしてそうなのか分からないが、「成功」という言葉を一般的な定義があるかのようにあまり多用してほしくなかった。
⇒成功を目的にしているような印象を受ける。はたして、「成功」することが人生の目的か?

上記の箇条書きの中では「成功」という言葉をあえて人生の成功という意味で使ったが、僕としては人生の成功というのは定義不可能なものだと思っている。本来、「成功」というのは短期的な目標が達成されたときや、基準が明確なケースでその基準を満たすなど、どちらかというと “achieve” に近い意味であって、人生という1人の人間の生涯をこれと同じとみなすのは違う気がする。「成功は結果であって目的ではない。」という言葉はフローベールのものだが、この言葉が的を射ていると思うのは、そういう理由からだ。だから本書が、マクロな人生レベルでの指南をしているのに対し、それが成功のためだとすることに対して違和感がぬぐえないのだ。
 
個々の内容は良かっただけに、安易に「成功」と言わずに、もっと謙虚な本であってほしかった。
 

Thursday, November 01, 2007

ユダヤ人大富豪から教わる

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①ユダヤ人大富豪の教え 幸せな金持ちになる17の秘訣 <本田 健>

おもしろかった。 そしてすごく考えがマッチするところがあった。
この本で教えられていることの多くが、僕自身が自ら感じていたことだった。
就職活動の際には人生というものについて深く考えさせられたし、お金ってなんだろう、幸せってなんだろう…ということも非常に長い時間をかけて考えたものだ。

本書は「成功するためには…」という口調で書かれている部分も多いが、結局は僕自身が思っていたこと、そしてフローベールも説いたこと、すなわち「成功ってのは結果であって目的にするもんじゃない」というところに結びつくところがあったと思う。
この本を読んで何を思うかはその人それぞれだと思う。たぶん深いところでいろいろな解釈がある。 自分としてはすんなりと入ってきてしかもシンクロできるいい本だったと思う。
人生に迷ったときはまた開きたい。

②ユダヤ人大富豪の教え (2) <本田 健>

お金というよりマクロな人生論だった前編に比べて、こちらは少し「お金」にフォーカスした内容になっている。
この点で個人的には前編に比べてかなり劣る内容だったと思う。 ところどころにいいことが書いてあると思うが…
やはり良くも悪くも「2冊目」となってしまった感がある。

ちなみに「あとがき」は読まないほうがよかった… やや興冷め。
このあとがきを読んだことによる興ざめ感もまた、第2作が第1作に対しての「2冊目」にほかならないことを意味しているのだろう。


ユダヤ人大富豪の教え…それでも全体としては、しっくりくるストーリーだったし、たまたまいい本に出合えたとも思う。Thanx