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CitibankのHPを見ていたら、
個人のお客様>預ける・運用する
のページに、「プレミアム・デポジット」という名前の仕組預金が大々的に宣伝されていた。
https://citibank.co.jp/ja/deposits_investments/structured_deposit/index.html
「高金利で、積極的な運用ができる商品は?」
「うまくいけば、外貨への交換が高金利で出来る。そんな都合の良い商品ってある?」
などと書いてあり、それに対する一つの答えが、この「預金」であると。
ウィダーインゼリー的な商品イメージを使っていて、何やら「チャージできそう」、とそう見えるこの商品は、副題「為替オプション付仕組預金」だ。
非常に分かりやすい手口のハイリスク商品なのだが、しかし、これをオプションのリスクも分からない多くの人が買ってしまう(実際には売ってしまう)のかと思うと、売り方が悪どい。逆の見方をすれば、これにほいほいと食いついてしまう個人はもう少し金融リテラシを高めるべき。
集客目的の極一部の商品を除いて、基本的に、リスクリターンが素晴らしく良い金融商品などない(逆はあるが)。そんな商品を作ったら金融機関は商売にならない。我々は、自分のリスク許容度に応じて運用方法を考えるのみで、リスク許容度が低ければ、高いリターンなど期待してはだめだ。
この商品は、円資金、または特定通貨の外貨資金を預けて、普通より高い金利を享受するもの。但し、通貨オプションを売らされている。上のスライドは、このうち円資金を預けるタイプを簡単に図解したもの。実際多くの日本人は手持ちが円cashなので、やるならこのタイプだろう。
運用者に与えられた裁量は、預入金額、期間、設定レート、相手通貨、そして預入のタイミングだ。
このうち、volatilityの高い通貨を相手通貨として選び、預入期間を長くとって、設定レートを基準レートからの差額0円に設定すれば、強欲的に高い金利を享受できる。預入金額はリスク元本。預入タイミングについては相場観の問題なので何ともいえない。
ところで、この高金利、そして、商品名の「プレミアム」の正体は、通貨オプション売却に伴うリスクの対価、つまり「オプションプレミアム」。ただ高金利を享受できると思った人や、「プレミアム」という単語から「プレミアム感」を感じてしまった人の金融リテラシはゼロなのだ。
スライドのケースの場合、運用者が売ることになるのは、外貨put/円callのヨーロピアンオプションで、所謂short putという状態になり、黄線のようなペイオフダイアグラムとなる。「設定レート」というのはオプションのstrike priceのことで、これより円高になると、オプションの買い手は権利を行使して、strike priceでの外貨売り・円買いをする。オプションを売らされている運用者にはこれに応じる権利ではなく義務があるので、結局、満期日に設定レートより円高の場合、預けたお金は外貨となって返ってくる。そのときのレートは預入時より円高なので、これをまた円に戻そうとすると、為替差損が発生することになる。しかもその円転レートはTTBなので、さらに手数料を抜かれる。
このような、オプションを売るという行為は、最初にリスクに見合った対価を受け取り、その後は不利な相場にならないことを祈るのみ、という状況を選択することに等しい。不利な相場になったときには、損が発生し、しかも相場によっては限度がない。
先にお金をもらって、将来の無限大のリスクをとる、そういう行為なのだ。
そういう基本的な概念を知った上で、リスクリターンの妥当性については、実際にモデルを使って計算してみないと分からない。有名なブラック・ショールズの発展形である、Garman-Kohlhagen Modelとかを使ってプレミアムの理論値を計算し、通貨のvolatilityと比較したりするのだ。あとは、個人のリスク許容度と相場観の問題。
しっかり考えた上で、リスクを取るのは大いに結構で、そういう意味で、別にこの商品自体は詐欺的でも何でもない。ただ、複雑になればなるほど、金融機関に「抜くとこ、抜かれている」もので、微妙。
オプションの世界はとてつもなく奥が深いのだが、Citiの売り方があまりにも目に付いたので、「さわり」の部分をざっくり書いてみた。