Monday, March 15, 2010

思考の整理学

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①思考の整理学 <外山滋比古>

初版は1986年。これはなかなか鋭い書だと思う。思考方法について、アイデアの生み方について、今の教育について、人間vsコンピュータについて…こうした分野における現在の名著と内容に齟齬がない。これだけコンパクトな本でありながらエッセンスがぎっしり詰まっている。

本書では、まず人間を2タイプに分類する。グライダー人間と飛行機人間だ。グライダーは自力では飛べないという意味で動力付きの飛行機にはだいぶ劣る。飛行機人間とは、簡単に言えば、創造性を持った人間のこと。そして本書の目的は、知識を受動的にでも吸収することに優れたグライダーと、自分で何かを発見できる飛行機の良さを兼ね備えた人間になるにはどうすればいいかというもの。

コンピュータという極めて優秀なグライダーが出現した今の世では、グライダー人間は通用しない。職を追われることになる。筆者は、多くの学校教育がグライダー養成教育であることに警鐘を鳴らす。これについては極めて同感。確かに学校教育の中で飛行機人間を養成するのは難しい。自力飛行能力の獲得にこだわりすぎると、グライダーとして飛ぶことすらできなくなってしまう可能性があるからだ。ある程度知識をインプットできなくてはアウトプットは思うようにできない。あとは画一的な教育方法に頼るのではなく、個別に子供を見て、その能力を慎重に伸ばしていく他ない。本書では、基本路線としてグライダー養成教育がなされる中、どういう工夫をすれば飛行機能力を伸ばせるかというところに主眼を置いている。それが思考の整理というやつなのかもしれない。要はインプット後からアウトプットまでの段階での方法論だ。
例えば、基本的なことにも思えるが、捨てる、忘れるという機能の必要性について。捨てる、忘れるということをせずに、どれだけインプットしてもアウトプットプロセスに影響が出ないのだとしたら、それはすごいが、残念ながら、我々人間の頭はそうはできていない。捨てる、忘れるというのは一つのメンテナンスなのだ。他にも、アナロジーの活用法、とにかく書いてみることの機能、セレンディピティなど、"頭"のしくみを多面的に分析し、いかにしてうまく使うかを解説。ライフハックの原典のような本。

文章も読みやすく、論理展開もクリア。行き詰ったときに読み返したい本。
ところで、これもよく言われることだが、ノートやメモについて、記録したという安心感が忘却を促進するらしい。メモも使いようだ。頭のスペックが落ちては元も子もないので。


②日本人が知らなかったETF投資 <カン・チュンド>

Amazonで高評価だったので購入したもの。
が、なぜそんなに高評価なのか理解に苦しむ。ETFの入門書としては悪い本では決してないと思うが、特段素晴らしいということもないと思う。広く浅く、初めての人でもETFを買おうかという気になるぐらい親切に内容が展開されているが、どれも当たり前のことばかり。逆に、リスクリターンの話やポートフォリオの話をよくわからずに投資をしている人が多いということなのだろうか。
債券と合わせてしっかり分散の効いたポートフォリオを組み、ポートフォリオボラティリティーのコントロールをしながら、長期で持てば勝てる、というのが大体の主旨だが、それだけで簡単に勝てれば苦労はしない。本質であるリスクリターンについて深堀りした解説ないままに、シンプルなルールを守ればたいがいは勝てると一貫して主張されていることに少し疑問を感じた。

ちなみにETF投資自体は、特に信託報酬の安さという観点で、非常にいいものだと思っている。アクティブ型の投信などはよほどのことがない限り買う気にはなれない。
 

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