Saturday, May 03, 2008

竹村氏の講演を聴いて

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少し前だが、京都造形芸術大学教授の竹村真一氏の講演を聴く機会があった。
テーマは環境問題について。

日本版アル・ゴアではないが、多くの写真入りスライドを交えての講演で、いろいろ記憶には残っているが、そのうち何点か備忘録として記しておきたい。


「平均」することの怖さ

例えば地球の平均気温が0.6℃上昇したと言われてもあまりピンとこないのだが、平均で0.6℃も変わっているとき、極地(北極とかヒマラヤとか)では5℃も6℃も変わっているという。
こういう事実を言われると、あんなに氷があるところで5℃も6℃も気温が上昇したら大変だ!と思うのだが…。
世の中「平均」でものごとを捉えることは言うまでもなく多い。マクロなものの捉え方をする際には平均という指標はかなり使いやすいものなのだが、人間はどうもこの値に惑わされて最大・最小値や分布といったものを考えずにすませてしまうことが少なくない。環境問題に限らず、この点留意しなければならない。


汚れた雪のメカニズム

アルベド(albedo)というものをご存知だろうか?
Wikipedia から引用すれば、

『天体において外部からの入射光エネルギーに対する反射光エネルギーの比をいう。反射能(はんしゃのう)ともいう。一般的には地表面が太陽の光を反射する割合のこと。反射率。単位は百分率、あるいは割合(0 - 1)である。
天体の反射率は大気がなく雲もない月は7%程度である。雲におおわれた惑星のアルベドは高く、白い雲のアルベドは70%程度である。
また、表面が雪氷に覆われている場合 (極地など) 、アルベドは80%にも達する。このため地球の熱収支において、雪氷域は単なる冷源としてだけでなく、太陽エネルギーの吸収率にも大きく影響する。例えば、地球が寒冷化し雪氷に覆われる面積が増えると、さらに寒冷化が加速されると考えられる(スノーボールアース)。
また、地球の赤道付近のアルベドは20 - 30%程である。逆に、温暖化によって雪氷が減る事は、さらなる温暖化の加速に繋がると考えられる。』

地球トータルの熱収支を考えるとき、氷雪に覆われた極地の役割というのはことのほか大きい。
これをふまえると、大気汚染が温暖化に結びつくというメカニズムが見えてくる。
すなわち、大気汚染によって氷雪の表面が汚れるとアルベドが低下するため熱吸収率は上昇し、地球温度が上昇するというメカニズムだ。
氷の汚れが温暖化に影響するとは…
白く見えるものは光を反射し、黒く見えるものは光を吸収しているということなど中学生でも知っていることなのに、こんなメカニズムに今まで気づかなかったとは何とも情けない。


人類社会の脆弱化

竹村氏は、現代の人類社会は過去に比べて、暮らし方を考えても、地球人口の増加を考えても脆弱になったと言う。例えば、都市はかつて自然の驚異から人類を守るためのシェルターの役割を持っていたが、今では逆に危険要因であると言うのだ。
過去の長い歴史の中にも地球の気候変動はあったが、それを乗り越えてきた背景には、状況に応じて文明を変化させたという事実がある。現代の人類社会はこの点で非常に弱く、これからは「変動」を前提とし、それに同調してゆくロバストな都市文明思想が必要だと同氏は説く。

地球という星に住んでいる小さな生き物である人間が傲慢になってはいけない。地球が人間に合わせるのではなくて、人間が地球に合わせるべきであって、これは文明が存続するための基本的発想なのだろう。


エネルギーは本当に不足しているか?

結論から言えば、太陽からのエネルギーは現在の地球需要の1.5万倍もあるらしい。
今は供給されたエネルギーを人類が使いやすいものに変換するインフラがないだけのこと。
ソーラーエネルギーに限らず、風力だってバイオマスだってとどのつまりは太陽からのエネルギーを利用している。今後はこの(無償に近い)エネルギーの利用方法を加速度的に模索していかなければならない。

ちなみに、化石燃料使用は「昔の」太陽エネルギーを現在になって使っているということに他ならない。

しかしそうなると、またミクロな視点に戻ってしまうのだが、国土の広い国はこれからの時代強くなっていくかもしれない。太陽エネルギーの受け取り方というのは、これから進歩してゆき、今では考えつかない様な技術も生まれるのだろう。そのとき、やはりもととなるエネルギー享受量というのは重要になってくるはず。正確に言えば、面積が広いだけではだめで、日照時間なども考えて総合的に太陽エネルギーの恩恵を受け取りやすい国が経済的にのし上がってくるだろう。
BRICs , NEXT11 ときて、もしかしたら次は太陽エネルギー享受にポテンシャルを持つ国々が経済的に注目されるのかもしれない。


food mileage.com

フードマイレージというのはご存知?
海外の遠くから輸入した食糧というのは、輸送の際に CO2 を大量に発生させているため、近くの国産食糧の方がエコだよ。という発想。
以下参照。

HP :  http://www.food-mileage.com/index.html
 

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