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死神の精度 <伊坂幸太郎>
毎度ながら、伊坂作品は何だか素朴。そして軽くていい。
本作品も伊坂ワールド全開で、6つの短編が「死神」をハブとしてうまくまとまっている。
死ぬ候補者として選ばれた人間を7日間調査して最終的に「死」か「見送り」かを決める役割を担っているのが本作品の主人公の死神だ。
6つの短編は、そんな死神の一人である「千葉」とそれぞれの候補者とで繰り広げられる短期間のストーリーを描いたもの。一つ一つのストーリーはどれも面白い。ただ、それ以上に1冊を通しての全体感というかバランスが良くて、読み終わったときにすごく清々しい気分になる。伊坂作品は往々にしてそうだ。
人が恐れ、悲しむ「死」、しかし必ず訪れる「死」。
これを非日常的な視点で、かつ軽いタッチで多角的に見せられることで、人生について考えずにはいられなくなる。
伊坂幸太郎自身のことはあまり多く知らないが、いろいろな作品を読んでいて思うのは、著者は何気ないものに対する感性が非常に鋭敏な人であるか、もしくは達観というかかなりの人生哲学を持っている人の何れかのように思えてくる。
著者自身がどんな人でもいいのだが、読者として新鮮な視点を授かれるのは非常に嬉しい。
内容に関して、そういえば何で最後は晴れたのだろう。
死ぬ候補者に選ばれたらほとんどの場合は「可」になるが、まれに「見送り」になったりするように、世の中何が起こるか分からない。天気だって千葉が仕事をしているときは基本的に雨だが、晴れることも時にはあるのだ。時間はいろいろな人の思いや判断、選択によって時々刻々とつくられていくのであって、誰か絶対者が決めているものではない。人の生死という一見大きな事の決定権をもつ死神の無力さによって、逆に、絶対者不在の世界の存在を感じさせられた。
人生、何が起こるか分からない。世界の誰にも。
Friday, May 02, 2008
死神の精度
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