Sunday, September 19, 2010

ライト、ついてますか

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①ライト、ついてますか -問題発見の人間学
 <ドナルド・C・ゴース / ジェラルド・M・ワインバーグ>


ワインバーグの古典。前から気になっていたので読んだ。
問題をどう定義するか、そもそも挑んでいる対象は解決すべき問題なのかどうか…など、問題を解くプロセスが1から始めるとするならば、プロセス0について主に論じた本。例が面白いのだが、かなり真剣に読まないと、何だか良く分からない…ということになる。表現が平易ではないだけでなく、内容もなかなか難しい。

誰の問題なのか、という視点の話と、問題解決による新たな問題の発生、という連鎖の話が特に参考になった。「問題」を、「認識された状態と望む状態の間の相違」と捉えると、ある問題を解くために状態を変えることは、即ち、また別の問題を発生させることだというのだ。問題解決はほとんどの場合で問題の転嫁に等しく、この転嫁先の問題は大抵無意識的に作られる。

「すべての解答は次の問題の出所」(p53)
「新しい視点は必ず新しい不適合を作り出す」(p65)

この2つの引用に凝縮されたポイントは日々の仕事でも生活でも意識すべき点。問題解決は気持ちのいい作業であることが多く、それ故にアフターケアを忘れがち。油断せぬよう、肝に銘じようと思う。

また、本書内で著者が「追って書き」という形で補足している部分が実は一番興味深かったりした。
2つ、要旨をメモしておく。

1. 「問題の出所はもっともしばしばわれわれの自身の中にある」(p118)
著者らの経験によると、問題が実は問題解決者自身に起因する割合は5割以上だそうだ。

2. 問題解決者が冒す危険
「問題解決に目を奪われるあまり、人は自らが解答を道徳的に容認できるかどうか考えるのを忘れる。」
「われわれの分野では、自分自身に対して真実であろうと思うなら、解答に、いや問題定義にすら、近づいて感受性が鈍り出す以前に、その道徳的側面について考えてみる必要があるのだ。」
「問題解決は決して道徳的に中立の活動ではない」
(p160)


問題解決、ロジカルシンキング系の本をいろいろと読んだ人は、こういう古典を読むのもいいかもしれない。
 

②20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
 What I Wish I Knew When I was 20 <ティナ・シーリグ>


よく売れた本のようだが、内容はかなりシンプル。
今まで読んだ自己啓発本にいろいろな部分で似ている。ユダヤ人大富豪の教えにも似ている。

何点か簡単にメモをして終わりにしよう。

・リスクもいろいろ。何をリスクと感じるかは人それぞれ。ほとんどの起業家には大きなリスクを取っているという自覚はない。

・「自分は、自分の会社と一体ではないし、製品と一体でもない。往々にして同一視しがちだが、失敗したからといって自分が失敗したわけではない。あるいは成功したときですら、自分の成功ではない。会社や製品は失敗することがあっても、自分が失敗者なのではない」(p118)

・「生きることの達人は、仕事と遊び、労働と余暇、心と体、教育と娯楽、愛と宗教の区別をつけない。何をやるにしろ、その道で卓越していることを目指す。仕事か遊びかは周りが決めてくれる。当人にとっては、つねに仕事であり遊びでもあるのだ。」(p121)

・「世の中にはたった50人しかいない」(p163)
人生においては、おなじ人が役割を変えて何度も登場するということの例え。出会った人、関わった人を大切にしよう、という話。

・交渉のカギは、参加者全員にとって最大限に有利な結果を引き出せるように、全員の利害を探り出すこと。相手のことを確りと理解することなしに、win-winな状況など生み出せない。biasを振り払って、(多くの場合に存在する)共通の利益についてもっと考えるべき。

・「何かをしようとするのと、実際にするのでは大違い」(p193)


プロジェクトの合間など、ふとしたときに読むといいかもしれない手軽な本。
やはり今の時代、売れるのはポジティブな本のようだ。
 

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