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GMO(Genetically Modified Organisms):遺伝子組み換え作物
バイオテクノロジーの台頭とともにこんな言葉が世に出てからかなりの月日が経った。
嫌だ嫌だと言いながらも、日本の多くの人はもうすでに知らないうちにGM食品を食べているでしょう。
(表示方法などがあまりにも曖昧なので。「遺伝子組み換えではない」の表示は多少の混入は無視している表示です。)
GMO自体の是非は非常に難しく、科学的にも思想的にもまだまだ結論の出ないところなので今回は棚に上げるとして、日本が直面している問題を簡単に確認しておきたい。
▼自給率
これは小学生以上なら誰でも知っているでしょう。
日本の食料自給率は非常に低い。経済的には極めて豊かな国家であるため、そのアンバランスさが何とも気持ち悪い。カロリーベースでの食料自給率は40%ほど。代表的な穀物の個別自給率をみると、小麦13%、大豆5%、トウモロコシ0%…そんなものだ。唯一健闘しているのが、主食であるコメの生産だ。(自給率96%)
従って、世界の食料が足りなくなり、各国が食料の輸出をやめたとき真っ先に潰れるのが日本ということになる。
小学生は社会の教科書でこのようなことを勉強し、大人は新聞を開けば食糧問題を目にする。それだけ多くの人がこの問題を認識していながら、日本人は非常にお気楽だ。贅の極みを突き進み、無駄にしている食料の量は世界でも随一だという。TVをつければ、辛そうな顔をして大食い、早食い、そんなことをやっている。
それがどうも最近になって少しは変化しつつある。
▼コモディティ価格暴騰
商品市場がおかしなことになっていることも日本国民周知のことだろう。
原油が連日のようにとんでもない高値を記録し、食料も同時に高騰。認識としてはそんなところだろうか。
金融機関が面白いレポートを出していた。食料価格の上昇はエネルギー換算でWTIを上回るというものだ。エネルギー換算するというところが今風だ。
原油高騰に注目がいきがちだが、食料の方も実は大変なことになっている。
食料価格高騰はスーパーに表示される値段を見ても顕著になった。いよいよ全国民の実感するところになると、マスコミはさらに囃し立てる。コモディティ市場に投機マネーがつぎ込まれているとか、原油の値上がりで輸送コストが上がっているとか、バイオ燃料との競合で値上がりしているとか…いろいろな情報が最終消費者の耳にも当たり前のように入るようになって日本の食卓は混乱状態だ。状況を考えて、大食い、早食いのような番組もちょっとは減ったのではないかと思量する。
つまりは、普段目にするものの値段が上がったという事実をはっきりと認識したことで、やっと国民の中に危機感が少しは芽生えたのだ。
ところで、食料の高騰といっても、全ての食料を同じように考えることはできない。例えば、小麦や大豆、トウモロコシといった作物は食料としてだけではなく、飼料やバイオ燃料として用途があるため、複雑だ。一方でコメは飼料としてはあまり使われていないし、米エタノールもまだ実験途上。そういった用途と食用との競合はない。従って、現状ではアジア人口の急増にほぼダイレクトに連動している商品となる。
幸い日本はコメの生産は得意だが、前者の作物(大豆やトウモロコシなど)は苦手で国際価格の上昇が大問題となる。
▼バイオ燃料と食用との競合
最近ずっとホットトピックなのはバイオ燃料の話。一昔前は、バイオ燃料は化石燃料に変わるホープで明るい前進性のある話題として取り上げられることが多かった。それが今では大きく2つの問題を抱えている。一つは、トータルで考えたときに本当に地球温暖化防止に貢献するのかという問題。これは結構クリティカルな話で、検証が続いている。もう一つは食料との競合の問題。こちらは日本国民もほとんどの人が知るところ。
バイオ燃料自体の効果、是非についてはまた別途エントリーするとして、今回は後者の問題について。
バイオ燃料の需要が高まり、そっちの方が儲かるようになると、バイオ燃料用作物の作付面積が増える。そうすると農地には限りがあるので、食料の方が圧力を受けることになる。簡単な仕組みだ。
現在の主な生産地域をみると、米国とブラジルがエタノール生産、欧州がバイオディーゼル。未だにバイオ燃料生産の経済性は良いとは言えないが、近年急速に需要は拡大し、それに伴って生産量も増加している。
バイオ燃料の消費動向としては、各国の使用目標に注目したい。例えば代替エネルギーへの転換に力を入れているEUでは、2010年までに輸送用燃料に占めるバイオ燃料の割合を5.75%に引き上げることを目標にしている。また、サトウキビからのエタノール生産で有名なブラジルでは2007年にエタノール混合比率25%、2008年にバイオディーゼル比率2%を義務付けている。
バイオ燃料が「環境問題対策に意味が無い」とでも結論付けられない限り、技術革新の可能性も秘められており、このような流れは続くことがまず間違いない。人類はエネルギーに対しては非常に貪欲だ。もっともそれはエネルギーが本当にピンチなのに対し、食料の方はまだ大丈夫というような変な認識によるものではあるが。
下図は金融機関のコモディティレポートで算出されていた推定値をグラフにしたもの。バイオ燃料の消費が急増している様子がわかる。
このような情勢の中で世界の人々は食料を確保していかなければならない。
日本人はただでさえ自給率が低いのだから、お金があれば問題ないという考えはやめて、現状をしっかり認めることが必要だ。生物は食べなくては生きられない。食料が本当にない状況では食べ物の前ではお金など紙クズと化す。
▼GM食品
燃料という競合の出現で世界の食料生産に暗雲が立ち込めていること、及び顕著な食料価格高騰をふまえて、日本の食を考える。1ヶ月ちょっと前に"zero"でGM食品のことが取り上げられていたのだが、米国で生産される大豆のなんと91%は遺伝子組み換え。トウモロコシの73%程度も組み換え。しかもこれらの割合は今なお上昇傾向にある。
下図は世界でのGMOの急増具合を示したものであるが、驚くべきスピードでその作付面積を増やし、シェアを上げつつある。(Monsanto社HPより)
GMO栽培面積(作物別)
世界の総栽培面積に占めるGMOの割合(2007)
問題はこのような状況の中で、日本人がどこまでGM食品に対してNoが言えるかということだ。
GM食品は安全性が完全に保証されているかといえばそんなことはない。長い間摂取して初めて何か変化が出ることだってあるし、時が経ってから科学の進歩に伴い重要な問題が明るみに出ることもある。アスベストも同じだった。
だからといって頑なに否定しつづけるのはどうだろう。第一世の中の科学技術なんて、ほとんどが安全かどうか、そういう意味では分からない。分かるはずがないのだ。
日本人は裕福であること、そしてマスコミや消費者団体の囃し立て方が異常であることで世界的にも特殊なスタンスを取っていたと言える。しかし、その流れも最近少し変わってきたのかもしれない。
7月1日配信の"MONEYzine"から一部引用。
『(調査結果をもとに)未だに「安心感」重視の傾向は強いものの、本調査の2週間前に実施した事前調査では、「価格」重視派企業を選んだ回答は1/4に留まっており、1か月内で割合として3割以上、「価格」重視派企業を支持する回答が増えている。その理由としては、「安全が確認されているなら安いほうがいい」「イメージで安全を否定するのはばからしい」「消費者の選択として遺伝子組み換え使用のものがもっとあってもいい」といった冷静な意見が目立つ。
これまで遺伝子組み換えについては消費者の不安感や抵抗感が強いとされてきただけに、今回の結果は、昨今の食品価格高騰による消費者意識の変化を印象付けるものとなった。食品値上げは当面続くと見られており、消費者の家計への圧迫が高まると、「価格」や「安定供給」を重視する企業を支持する回答が増えるとも予想される。』
こういう記事を見るのは初めてだった。
価格が上がると、どこかで消費者が妥協する点に達する。農薬だって反対派は多いが、結局農薬不使用の野菜だとか有機野菜だとかを高い値段で買っているのは一部の人。多くの人は価格というのも選ぶ基準としては重要だ。食品価格が上がり続けるといずれ多くの人が平気でGM食品をカゴに入れる日が来るだろう。
その価格上昇だが、非GM食品においてはどうも今後顕著になっていくだろう。GM食品の生産が主流になった作物では、非GMOの価格は"相場価格+プレミアム"という形になり、商品市場の暴騰とかそういうレベルではない。もっと最悪な事態になると、非GMO自体が足りなくてお金を出しても手に入らないということになる。そうなったとき、その食品(例えば大豆やトウモロコシ)を一切食べないようにするのか、それとも妥協してGM食品を食べるのかという選択になれば後者を選ぶ人の方が多いかもしれない。
あくまでも消費者がGMか非GMか選ぶ余地は残しておくべきだとは思うが(現在の有機栽培などのように)、経済大国日本であることをいいことにあまり贅沢を言っているととんだしっぺ返しを受けることにもなりかねない。最近の食料価格高騰は、国民一人ひとりがマインドコントロールされることなしにゼロベースで生きていくための食糧問題について考えるためのいい転機なのかもしれない。
日本モンサント
http://www.monsanto.co.jp/index.html
ISAAA(国際アグリバイオ事業団)
http://www.isaaa.org/
USDA(米国農務省)
http://www.usda.gov/wps/portal/usdahome
Sunday, July 13, 2008
日本の抱える食糧問題
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