Sunday, July 27, 2008

金融工学・経済、入門本

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①金融工学、こんなに面白い <野口悠紀雄>

金儲けのための胡散臭い金融工学という印象を払拭し、学問をいかに実経済に応用するかという視点を与える本。『「超」整理法』のときも思ったが、野口さんは本当に頭がいい。
本書では普通難解な数式が飛び交う金融工学を極力数式無しで理解することに主眼を置いている。
ちょっとした実務や、経済ニュースを金融工学的な考えから見る際には、複雑な数式を理解していることはそれほど重要ではないし、式の証明ができることも必要であるとは思わない。ざっくりとでいいから正しい理由を以って現象を説明できればそれでいいと思う。本書では金融工学の基礎の部分でそれが達成できているのではないかと思う。
中でも、説明が良かったと思える項目は以下。
 1. 市場を出し抜くことはできない理由
 2. 人々が最大化するのは期待効用であって期待利得ではないことの説明
 3. 「裁定」を利用した各現象の説明(特に先物のところ)
 4. デリバティブの存在意義の話

ところで、本書をもってしても難しさが払拭できないのはやはりオプションについてだろう。
多様化するオプションを説明するには、もう少しページ数が必要だろうし、新書の形式では限界があるようにも思う。実際、少しだけ出てくる数式は本書では読みにくくて仕方が無かった。野口さんには、是非、横書きで図を多く交えながらオプションについて説明した本を出して欲しいところだ。

全体的に野口さんらしいユーモアも散りばめられていて、肩肘張らずに読むことができる良本だと思う。はじめて金融工学を学ぶ人には分量も丁度良く、おすすめ。


②カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編
 <細野真宏>


有名な細野さんの古い本。友人の部屋にたまたま転がっているのを見つけてサッと読んだ。
それこそ僕が高校生の頃から著者の受験参考書は本屋にあった。と同時に、経済系の本も見かけていた。
紙質が独特で、何だか書名と表紙がちゃらけた感じだったので読んだことは無かったのだが、今回読んでみると意外といいなという感想。
どういう層を対象にしているのかはわからないが、下手すれば小学生でも楽しんで理解できる内容。高校~大学1,2年というのが一番丁度いいところだろうか。『アメリカの高校生が学ぶ経済学』のような王道的な経済学ではなく、逆に各経済現象がどのような理由で起きているのかを説明していくうちに全体観も養うというボトムアップ型の教科書だ。
説明はなかなか明快で、そうするためにも極力現象を単純化し、例外などはどんどん取り払っているというのが特徴。本書を読めば確かに経済のニュースの理解が促進されるかもしれない。
社会人が読む内容ではないかもしれないが、比較的誰でも読む価値のある良書だと思う。
 

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