Monday, December 14, 2009

イタリアの旅1 -エステ荘を歩いて-

------------------------------------------------------------------------------------
ここに書くのがだいぶ遅くなったのだが、11月に10日間ほどイタリアへ旅に出た。
なぜイタリアかといえば、土地への興味、文化への興味、イタリア製品への興味、そしてイタリアンが好きといろいろ条件が揃っていたからだ。イタリアは初めてで、どの都市にも興味があったが、時間を考えて取捨選択し、結局以下のルートで回ることにした。せっかくなのでこのBlogにも少しだけ旅の風景を書くことにした。

<旅のルート>
Roma → Salerno → Amalfi → Sorrento
→ Napoli → Capri → Firenze → Venezia

旅行では定番の中部~北部の主要都市に加え、南イタリアを回った感じです。


▼ローマの風景

最初に降り立ったのが首都ローマ。
首都だけあって人は多い。中央駅周辺ではイタリアのイメージをまず一つ壊される。
街はきれいとは言えないし、伝統的なものもそれほど感じない。列車のpaintingにも驚く。もう描けるところがないぐらいに車両にはpaintingがなされている。イタリアの地を拠点とした芸術家たちのDNAが今も息づいているのだろうか。ただ、その内容は日本のガード下のラクガキと変わりはない。

DSC03363

後で比較してわかったことだが、ローマとナポリの中央駅周辺は特に美しくない。
ただ、中央駅を離れて街に出れば、そこにはイタリアの歴史と現代の人々の生活とがミックスされた、思い描いていたイタリアがあった。ローマ市街の建物はその一つひとつから歴史を感じることができ、日本にはない不思議な時間軸を感じた。

主要な名所は回ったものの、たぶん今回の旅では本当の意味でローマの良さはわからなかったと思う。そこは首都、いろいろなものが混在する街だし、住まなければローマの何かは知れない。

意識していなかったのにたまたま、少し運命的に目に入ったのが、以前に書いたことがある Campo Marzio Design の店だった。
日本には店がないので、セレクトショップ、ネットショップで一部の製品が買えるぐらい。場所も調べていなかったのに偶然バスで通り過ぎたことに感謝し、いろいろ買って帰った。やはりモノがいいし、最高の店だった。A4のノートホルダーは特に気に入った。ITO-YAの黒いホルダーを使っていたが、鮮やかなオレンジ色の皮製ホルダーに変えることにした。

Campo Marzio Design HP :
http://www.campomarziodesign.it/index.html

ローマといえば、世界最小の主権国家であるヴァティカン市国にも行った。サン・ピエトロ広場には、おそらくローマ教皇を映したりするのであろう大型モニターがあったが、でかでかとPanasonicの文字。「繋がっているな」と感じた。世界のどこにあるものでも誰かが作っている。

DSC03420

コロッセオは巨大だったし、トレヴィの泉はやはり青々としていたのだけれども、ローマの旅を振り返って最も印象に残っているのはその郊外にあるエステ荘(Villa d'Este)を訪れたことだ。
世界遺産でもあるVilla d'Esteは古代ローマの別荘地であるティヴォリ(Tivoli)にある。
僕はたしか中学生ぐらいのときにこのエステ荘を知った。好きな作曲家の一人であるフランツ・リストの曲「エステ荘の噴水」に衝撃を受けて以来、気になり続けていた存在。ここを訪れることは実はこの旅の一つの目的でもあった。

DSC03326

エステ荘は枢機卿イッポリート2世(Ippolito d'Este)が1550年に修道院を改築したもの。美しく構成された広い庭園と数々の噴水が非常に素晴らしい。まさに水の饗宴。
エステ荘を幻想的な世界にしているのは噴水だけでなく、緑でもある。高く上がった噴水の形は糸杉のシルエットで両者が何ともいえない融合を果たす。糸杉といえばゴッホだが、僕も糸杉というものには何故か特別な感情を持っている。あのひょろりとしなやかに上昇するフォルムは何なのだろうか。不思議と気持ちが安らぐのだが、一方で少し哀しくもある。リストは1877年に『巡礼の年 第3年』の中で「エステ荘の噴水」だけでなく、「エステ荘の糸杉に 哀歌」という曲を2曲書いている。
晩年、リストは僧籍を取りエステ荘に滞在したのだが、後のラヴェルの「水の戯れ」やドビュッシーの「水の反映」に大きな影響を与えることになる印象派音楽がここで生まれたことは頷ける。

DSC03347

エステ荘は確かに五感が研ぎ澄まされる、文字通りの「別荘」だった。訪れる人の人生観にも影響を及ぼすぐらい圧倒的でかつ感傷的な地にいつかまた行きたいと思った。人生に迷ったときには特に。

DSC03294

エステ荘は高台にある。周辺の長閑な風景が一望できる。俗世から一歩出た気持ちになる。

Villa d'Este :
http://en.wikipedia.org/wiki/Villa_d'Este

写真の数々 :
http://www.youtube.com/watch?v=rNNLpbz2bRE


「エステ荘の噴水」 フランツ・リスト
演奏:クラウディオ・アラウ(Claudio Arrau)
 

No comments: