Wednesday, February 03, 2010

沈みゆくVenice

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ニュースを追っていて一つの記事が目に入った。

『水の都ベネチア改修事業、潮位上昇と浸水に勝てず』

-以下抜粋---

2/1 Bloomberg:
「運河の町」として知られるイタリアのベネチアが、アドリア海の潮位上昇と頻度の増す浸水との闘いに負けつつある。この町は数世紀にわたって沈下している。

今日のチャートは、イタリア政府がベネチアを海面よりも上に維持するため資金を投じているにもかかわらず、浸水する日が過去最多に達していることを示す。ベネチアの名所であるサンマルコ広場は、潮位が平均海水面を80センチ上回ると浸水する。2008年には水位が156センチに達し、市内の車道や歩道の多くが沈んだ。

イタリア政府は、03年にスタートした45億ユーロ(約5600億円)規模のモーゼ・プロジェクトの資金の一部を拠出するにとどまっている。このプロジェクトでは、季節的な潮流や異常気象の影響で水位が上昇した場合にせり上がる78個の水門を建設している。竣工(しゅんこう)期限は当初の11年から14年に延期された。

ベネチアの潮流センターのディレクター、パオロ・カネストレッリ氏は電話インタビューで「モーゼ計画は最良のプロジェクトではなかった。目に見えるような改善は今までのところない」と指摘。「現時点でできることは14年まで成り行きを見守ることだ」と述べた。

ロンドンを拠点とする慈善団体ペリル・ファンドのベネチアの責任者、アンナ・サマーズ・コックス氏によると、モーゼ・プロジェクトを終了させラグーン(潟)の整備や歩道の引き上げには75億ユーロの追加費用が必要と見込まれる。

コックス氏によると、イタリア政府は既に、状況の改善に向け過去20年間に78億ユーロを支出している。ベネチアを訪れる観光客は1日当たり約5万人。イタリア銀行(中央銀行)のデータによると、国外からの旅行者が宿泊や食事、ゴンドラや水上タクシーなどの代金として支払う額は年間約23億ユーロに上る。

記者:Flavia Krause-Jackson、Giovanni Salzano

原題:Record Venice Tides Defeat $6.3 Billion Project

-UNQUOTE---

ベネチアにはつい最近行ったばかりだが、"沈没"の話はあちらこちらで聞いていた。街の美術館には、ベネチアが一度ひどい水没被害にあったときの写真集などもあり、とても印象的だった。

考えてみれば不思議な土地だが、あまりにも微妙なバランスの上に成り立っている都市ゆえ、その魅力と生活を支えるのは難しい。悲しいことではあるが、地球を包む大きな海の前に小さな島は無力すぎる。ベネチアを愛する人々、利害を考える人々、自然保護を訴える人々…いろいろな立場の、しかし同じ人間が、この美しい奇跡の街の未来をどう創るのか。ベネチアに魅了された一人として非常に気になる。

それにしても添付画像(チャート)を見ると絶望的だ。長いスパンで着実に街の未来は食われつつある。
大海の潮位上昇に人工的な水門で対抗するというのはサイズ感の観点で何だか滑稽にも思えるが、完成後、グラフがピークアウトすることを祈るのみだ。


National Geographic提供の素晴らしいページがあったのでこちらもご参照。
いろいろな仕掛けがあるが、特に潮位によってどの部分が沈むのか視覚的に分かるようになっているのが素晴らしい。
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0908/feature02/multimedia/index.shtml

もう一つ、モーゼ計画について、こちらも詳しい。
http://www.wave.or.jp/outline/doc/vene_j.pdf
 

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