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①生物と無生物のあいだ <福岡伸一>
一月程前に読んだ本。何と今更。
世を賑わせた当時、何人もから内容を聞いてしまっていたために、わざわざ買って読む気をなくしていたのだが、春の自己紹介シーズンに向けてちゃんと読むことにしたもの。バイオ系の出身だというと、大体この本の話になる。あまりにも売れすぎた本ゆえ、職場でもかなりの人が読んでいて、その流れは避けられない。ならば読んでおこう、という不純な動機。
しかし結果として読んで良かったなというのが正直な感想だった。
DNAとかアミノ酸にときめいた中・高生のころの感覚が懐かしくも蘇ってきて、時間感覚の不思議な錯綜を感じずにはいられなかった。こういう本はやはり面白い。パラサイト・イヴやリングシリーズもそうだった。ストーリーとスピード感を伴ったバイオ。
結局、リアルな研究現場と研究者としての生き方が、描いていた像とはだいぶ異なるものだったことを知り、早々に方向転換することになったが、今でも興味はある。素直に面白いと思える。
サイエンスの一部分を新書という形式で描いた本書がこれほどまでに売れた理由が著者の類稀なる表現力、ストーリー構成力であることは論を待たないのだろうが、それにしても何だろう、このテンポ感は。本書の内容は実際、結構難しいものだが、多くの人は何となく「わかった」のではないだろうか。僕が読みやすかったのは何もこの分野の知識を持っているからだけではないだろう。
残念なことに本書が本質的に(表現力とかを超えたところで)なぜこんなに不思議な読みやすさ、わかり易さを生み出しているかは、僕にはさっとの一読では分からなかった。ただ、文を書く際に非常に参考になる本だということは分かった。また読みたい。
ちなみに、『冷静と情熱のあいだ』は好きです。福岡さんもきっと好きなんだろう。自著のタイトルを嫌いな小説のタイトルには似せまい。
②株式会社の基本 <柴田和史>
新会社法の基礎がコンパクトに纏められた本。
僕は以前、ビジネス実務法務検定2級なんて試験を受けては見たものの(一応合格)、法律にはかなり疎い。そして嫌いな分野だ。子供染みてはいるが、法律とかルールとか、そういう縛りがたまらなく嫌だ(もちろん法律のおかげで守られているし、生きれている)。
しかし、会社をやる場合や、起業こそしなくても経営者目線で仕事をするにあたっては法律を知らないわけにはいかない。知らぬうちに法律違反で捕まってしまった、なんてこともザラに起こりうるということが分かってきた。ビジネスの世界より法律の方が高いところにあるので当たり前といえば当たり前だが…。
株式会社に関する法律だったり基本的な仕組みを知らない人にとって、本書は非常に費用対効果の高い一冊になると思う。レベルも平易で、一冊読めば何となく会社のことが分かるようになる。ニュースを毎日見て断片的な知識を繋いでいってももちろんいいが、こういう本も悪くない。
Monday, April 20, 2009
xxとyyのあいだ
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Leolio
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Label : books
Monday, April 13, 2009
体に変化があったなら
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4月だというのにインフルエンザにかかった。所々でしぶとくB型が流行っているらしい。
おかげで仕事を3日半も休むことに。異動に伴う「引継ぎ/引継がれ」の忙しい時期でもあるので3日半はあまりにも痛い。仕事が溜まりに溜まっている。おまけに薬とポカリ漬けの日々で弱った胃に、この時期の頻繁な歓送迎会は辛い。
事の始まりも歓迎会から帰った夜。酒のせいでフラつくのかと思いきや39.3℃。体温計を見て酔いが覚める。翌日町医者に診てもらうが、インフルエンザ検査の結果は陰性。解熱剤と抗生物質を処方される。
さらに翌日、解熱剤を3度飲んでも38度以下に熱が下がらない現実に違和感を感じ、少し大きな病院へ向かった。経過を話し、再度インフルエンザキットで検査をしてもらうがまたもや陰性。至れり尽くせり色々な薬を出してもらい帰路につくが、何か嫌な予感がしていた。薬は違えど相変わらず解熱剤と抗生物質のコンビ、やはり効かない。ちなみにもちろん安静にしてひたすら寝ていた。
一向に治らない中、同僚が何人かインフルエンザの診断をされたという事実を受け、自分もインフルエンザであることを確信しながら翌日再び医者に検査をせまる。3日連続で医者にかかるとは嫌な患者だ。
しかし予想は的中した。かなり密に採った体温データと薬の服用記録、さらに同僚がインフルエンザだという事実をひっさげてせまる僕に嫌な顔をしていた医者は、検査後急に申し訳なさそうに、インフルエンザにも関わらず検査キットで陰性が出てしまうケースについての講釈をたれた。可能性は2つ。ウイルスの増殖が足りなかったか検査する医者の技術の問題。おそらく後者であることを咎めても仕方がないので大人しく抗生物質ではなく今度はウイルスの増殖を止める薬をもらって家路についた。今回はグラクソのリレンザ。
今回のエピソードはしかしどんな病気においても普通に起こりうることだと僕は考える。
勝手な予想でしかないが、多くの医者の診察では100%の力が発揮されていない。医者は短い診療時間で限られた情報をもとに、自分の知識・経験へアクセスし診断を下す。そして1日に数多くの患者を診る。パレートの法則のイメージそのもので、短時間で"大体"ちゃんとした診断を下す。
しかし時にもっと時間をかけて良く考えれば見落とさないであろうことも見落とすことがある。これは供給できる医療の量が限られた中でできる限り多くの人を助けようとするのだから構造上ある程度致し方ないことだが、やはりそれが自分に当たってしまうと普段以上に考えてしまうものだ。
よく言われることだが、患者側はもっと医学に関するリテラシを高めるべきだと思う。自分の体を医者に任せきりではどうしようもない。24時間自分の体をモニタリングしているのは紛れも無く自分なのであるから、少なくともデータの取得には努めるべきだろう。素人判断は危険だが、それは医者に全てを任せたほうがいいということと同一ではない。自分はデータを提供する。医者はそれに基づいて判断を下す。これが基本的で最も成功率の高い事実の検証方法ではなかろうか。
特に理系の性というわけでもないが、僕はそのような考えの下、怪我でも病気でも、体に何か異変が起こった際にはデータをとることに努めている。薬の服用記録、体温の定期的な記録はもちろん、見た目や感じ方の変化も時系列で記録していく。特に五感で感じる変化というのは記録が必要だ。人間の記憶は非常に曖昧な上、感情にも左右されやすいからだ。客観的な事実としてのデータが重要なのだ。記録をつけることは簡単だ。何も労はいらない。医者に正しい情報を提示することは名医に出会うよりももっとベーシックで効果的な方法だろう。これまで意識したことがなかったという方は実践されたし。
医学に関するリテラシを個人が高めることは重要で、もっと意識するべき。ただ、事実を記録することはもっと重要。
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Label : thinking
Monday, March 30, 2009
SAL
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amadanaから超小型ビデオカメラが登場するのだが、個人的に大注目している。
名前は"SAL"
ネーミングがなかなか良くて、呼びやすいし、可愛げがある。
Smile and laugh
Share a love
Share a Life
Sexy and Lovely
等、いろいろな S・A・L が背景にあるらしく、何だかコンセプトが楽しい。
横54×縦95×厚さ12、85gのミニマルなボディに備わっているのは2hまでの録画機能だけだが、そういうシンプルなところが使いやすいのだろうと思う。インターフェースもシンプルで、とことん無駄を削ぎ、その分デザインと使いやすさ・手軽さにこだわった一品。電源onからたった1秒で録画可能状態になるらしい。USBで簡単にSAL同士、PCとも動画をshareできるというウリもあり、スタートダッシュが決まれば、所謂ネットワーク外部性というやつでぐいぐい売れる可能性を秘めている。SNSや動画投稿サイト、ブログなどが日本でもだいぶ普及したので、土壌はある。こういう手軽に動画を撮れる機器を市場に出すには今はベストなタイミングだろう。アメブロと相性いいようなので、タレントが使い始め、それが高い宣伝効果を生む、という構図も見えてくるし、mixiとも手を組んでいるのでなかなか用意周到な模様。
ただ、ややネックなのが価格。amadanaのプロダクトは基本的にその電化製品としてのスペックに対して値段が高いのだが、このSALもそれは同じ。デジカメでも動画は撮れるし、携帯電話でもそれなりに録画ができる現代にあって、この録画機能だけで2万円だ。デザインとコンセプトは優れているのだが、価格の面でi-podのような爆発的なhitには至らないだろうということが容易に予想される。せめて1.5万円であって欲しかった。
あとは、sound面が心配。内蔵マイクはモノラルでサンプリング周波数は16kHz。これってどうなんでしょう。例えば会議の様子とかプレゼンなんかを撮るぐらいならいいけど、音楽やってる僕としてはちょっと残念なところ。
まあでも僕は速攻で買いますけどね。結局。
発売は5/22、予約開始は4/17
楽しみだ。(ちなみに色はブラウンを買う予定)
ともだちのみなさまへ、SAL買ったら連絡ください。SAL lifeしましょう。
SAL: http://www.amadana.com/sal/top.html
(このプロモーションサイト、良くできてます。かなり購買意欲高まる。)
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Label : design
Tuesday, March 24, 2009
Tezuka Architects
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Arch Daily を読んでいて、アンテナ立ったので取り急ぎメモ。
写真は世田谷の「壁のない家」 by Takaharu+Yui Tezuka
手塚夫妻の建築(プロジェクトモノではなく、特に家)はけっこう好きなのだが、それほど新しくもない、この「壁のない家」の存在は全然知らなかった。世田谷という近場でもあるのに…
地震大国日本、しかもいつ巨大地震が起きてもおかしくないとされている関東でこの構造…心配は拭えないのだが、日本の都内の一軒家としては晴れ晴れするぐらいの開放感。
天窓とか欲しいな、将来。
手塚建築研究所の作る家は屋根とか天窓が素晴らしい。 <空を捕まえる家2>
こちらもついでに同じ手塚建築から。「捕まえる」シリーズの中でも、このダイニングキッチンは特に気に入っている。雨の日だってあるかもしれないけれど、自然に敏感になれそう。部分的に開いた天窓から見る空は、家族にとって普通の空とは何か違う大切な景色になると思います。
手塚建築研究所:http://www.tezuka-arch.com/
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Label : architecture
Sunday, March 15, 2009
コンビニで売ってた本
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①「やる気がでない人」の心理学 <加藤諦三>
夜に家の近くのコンビニへ買い物にでかけたとき、なぜか買ってしまった本。
コンビニで雑誌ではなく本を買うというのは初めてだったし、そもそもコンビニに本はほとんど置いていない。でもなぜかそのときにこの本が置かれていて、そして気になってしまった。普通本を置かないコンビニに、わざわざ数冊置いている本にはそれ相応の理由がある。コンビニ利用客(しかも雑誌コーナーに立ち寄る客)なら買う人が多いかも、という予想がなければ置かないはず。そんな本を買った僕もまた、実はターゲッティングされた人間だったりするのかもと思うと何だか複雑だ。
さて、何はともあれ、内容。著者の加藤諦三さんという方は知らなかったのだが、恐ろしいほどの著書がある、もう70歳をすぎた心理学者。そういう人が書いた本だけに内容はけっこうしっかりしていると思う。コンビニで売られているからといって侮るなかれという感じだ。特に構成等気合を入れて書いたというような本ではなく、多分ある程度ササっと書けてしまった類の本なのだと思うが、さすがのキャリア。読みやすいし、けっこう鋭い。
「やる気がでない」という感情やそれに近いものは、どのような理由で起こるのか、そしてそのルーツはどこなのか。様々な角度で書かれている。自分がやる気がでないときはもちろん、周りの人のことを理解するためにもオススメできる本だと思う。精神的にタフな人、ポジティブな人、そして育った環境の良い人(これは本書を読めば分かる)は、周囲の悩んでいる人の気持ちが分からないわけでもないが、おそらく本質的には分からない。自分の考えの範疇を超えたところでその人が悩んでいるからだ。相手のことを理解していなければ、やさしくはなれないし、助けてあげることもできない。そういう意味での気づきも多い良本(しかもすぐ読める)だと思う。
②超簡単 お金の運用術 <山崎元>
非常にシンプルな運用の本として各所で絶賛されていたのを見て購入。
確かにシンプル、かつ分かりやすいし、庶民向き。
僕は投資とか運用に対する熱は全然なくて、この点非常に庶民というか、モチベーションは平均以下かもしれないのだが、すごく共感できる内容だった。著者は転職回数の多さでも有名な山崎さんだが、なんか人生に対するスタンスがすごく冷静というか淡々としている。であるから故にか、こういう本は非常にハマっている気がする。金融機関に勤めていながら、これだけ「庶民の味方」な本を書いていいの?というぐらいの開けっぴろげな内容で、かつ理論とも齟齬はない。自分で考える頭(や知識)がない状態で、ある一人の考え方を妄信するというのもどうかとは思うが、この一冊はそんなに害のない(そして多くの人にとってためになる)一冊ではないかと思う。
普通の人が投資とかお金のことであくせくするのってどうなんだろね?だったら楽でほぼベストというやり方にしておけばいいんじゃない?という本書のスタンスには、とにかく好感が持てた。
最近、仕事の方で硬い専門書を読んで疲れる反動で、プライベートはとにかく軽い本が多い。
しばらくこの傾向続きそうです。
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Leolio
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Label : books