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ブルー・オーシャン戦略 <W・チャン・キム&レネ・モボルニュ>
「ブルー・オーシャン戦略」という単語自体と、そこでの青い海が何を意味するのかということは広く世の中に知れ渡っている。僕もこの戦略論をかいつまんで説明したような本は読んだことがあるし、ブルー・オーシャンという単語もまるで広辞苑にでも載っているかのように当たり前のものとして使っていたのだが、訳本ではあるが大元を読んでいないというのは何とも…という感もあって読むことにした。
読んでみての感想は、素直に「勉強になった」。他の多くの企業戦略関係の書物に書いてあることのおさらいとして。また、いくつか新たな気づきを得ることもできた。
一方で、この本は下馬評ではそれほど絶賛されていなかったのだが、それも頷けた。
革新的かどうかという点で過剰な期待をしてしまった読者からすれば、「ブルー・オーシャン戦略」という題名と青い海の表紙をつけてこの本を世に出したことこそが、ブルー・オーシャン開拓だよ…と揶揄したくもなってしまう。それほど、企業戦略を語る上で「ブルー・オーシャン」、「レッド・オーシャン」という言葉は言い得て妙で、しっくりくる。
ためになる本だとは思うが、読者が1ページ目を開く前にハードルが高くなりすぎてしまっている。
ところで、この本で語られるブルー・オーシャンとは、レッド・オーシャンから一歩抜け出したところに開けているもの。レッド・オーシャンというのは簡単に言えば、市場構造は変わらないという前提のもと、既存の市場空間で一定の富(シェア)を他社と奪い合うという血みどろの状態だ。プレーヤーは低コストと差別化のどちらかの戦略を選んで他社に対して優位に立とうとするが、市場が成熟していくと、結局はどのプレーヤーもジリ貧に陥る。これに対してブルー・オーシャンでは競争は無意味化されていて、競合他社をベンチマーキングすることもない。 value innovation によってトレードオフとされてきた差別化と低コストを同時に実現し、莫大な利益を生む。
こんな最高の青い海を体系立ったプロセスで見つけることができるというのならそれはそれはすごい戦略論だろう。しかし、そんなには甘くないのは世の常だ。
戦略策定後の実行プロセスに現実的な難題がつきまとうのは想像に難くなく、この部分についても本書は多くを述べているが、抽象的な話も多く、期待しすぎていると裏切られる。冷静に考えれば実行プロセスを確実に成功させるような普遍的なやり方があるとは考えにくいのだが、期待してしまったが故にがっかりするというありふれた現象が読者に起こる。
加えて、上手く戦略を実行できたとしても他社に簡単に模倣されてしまってはどうしようもない。これについても、ブルー・オーシャン戦略が模倣されにくい理由というのが挙げられているが、どうも安堵の気持ちにはなれない。本書では、価格設定を上手くやれば一気に突っ走ることができ、2番手以降は到底勝てないということの説明がなされているが、そこの議論も非常に興味深いものの、それほど目新しい考え方ではない気がする。
…というように何だかスッキリしない感もあるが、それは期待過剰で、そもそも爆発的な利益が出るような戦略の策定にそんな普遍的超攻略法が確実に存在するはずはない。もしあるのなら、みんながみんな本書を片手に利益をあげていっているはずだ。
僕の場合、発行されてからかなり経って本書を手に取ったので、当然前評判は知っていたわけで、最初に書いたとおり、素直に勉強するというスタンスで読むことができた。
以下、面白かった手法、考え、トピックを列挙しておく。
・戦略キャンバス
・4つのアクション(「減らす」、「取り除く」が極めて重要)
・戦略策定には順序が大事だという話
・ネットワークの外部性
・コストプラス方式での価格設定ではなく、価格マイナス方式でのコスト目標を設定するという話
精読してもさほどは時間がかからない分量だし、本書を読んだことがない方には、革新的な戦略論による刺激を過剰に期待することだけはせずに一度本書を読むことをおすすめします。事例も豊富で面白いとは思います。
Tuesday, March 25, 2008
ブルー・オーシャン戦略
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