Sunday, October 05, 2008

エネルギー

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エネルギー(上)・(下) <黒木亮>

『トップ・レフト』や『巨大投資銀行』で御馴染みの黒木さんの新刊。
題名は味もそっけもない『エネルギー』だが、読了してみると、確かにいろいろな意味を込めて一番シンプルなエネルギーという題名をつけた作者の気持ちもわかる。
主な舞台は産油国周辺(中東、ロシア)とマーケット周辺(英国、シンガポール)、そしてもちろん日本。
物語は3つの商社「五井商事」と「東洋物産」、「(旧)ト―ニチ」を中心に、エネルギービジネスの裏側を描く。
本書はフィクションということになってはいるが、ノン・フィクション度合いが強すぎる。社名・プロジェクト名は、ストーリーへの関わり具合(もしくはエグさ)によって実名か少し変えられた名前かに分けられているが、基本的に手を加えられた名称にボカシの効果はない。特に詳しくない人でも容易に想像がつくものばかり。丸の内にある商事といえば一つしかないし、大手町にある物産というのも一つしかない。外銀の名前もCSFA、JPモリソンなどほとんどそのまま。一方で、ストーリー上重要なCAOやガスプロムといった企業は実名で出てくるからこの辺りの線引きも謎。
とにかくどこまでが事実でどこからがフィクションなのか分からないぐらいの作品で、内情をよく知る人からは「リアルすぎ、エグすぎで読めない」という声もある。まったく黒木さんの豊富な知識と情報収集力には舌を巻く。また人脈という意味でも恐ろしい。黒木さん自体は「五井商事」の出身なので、五井商事の内情をよく知っているというのは分かるが、東洋物産、トーニチについてもこれだけリアルに書けるというのは本作品が相当なリークに下支えされているということに他ならない。

さて、内容はというとエネルギービジネスの2つの側面をパラレルに描いたもの。一つは油の出ない日本がどのようにエネルギーを確保するかという実需の話。もう一つはマーケット上でのエネルギー・デリバティブの話。どちらも世界規模で(特に日本では)重要なこと。実需の面で世界は石油の争奪をしているし、最近の原油価格の高騰は一般的な日本人でも数字のみならず実感しているところだろう。エネルギーを巡って一般の人々に見えないところではどのような戦いが繰り広げられているのか楽しみながら理解することができるのが本作品だろう。本作品をじっくり読めば、何気ないエネルギー関連のニュースの裏にある動きを何となく想像できるようになるだろう。上述したように、企業名・プロジェクト名もほぼナマのもの、また時間軸もリアルなので非常に勉強になる。下巻の巻末には簡単な用語集がある上、本文中にも分かりやすい説明が挿入されている。政治の話も多分に絡み、確かに難しいのだが、普通の人が読めるギリギリのレベルになっていると思う。
小説としても、黒木さんらしく躍動感溢れたものになっている。仕事帰りの眼精疲労をしょってもついつい電車の中で読んでしまう作品だった。詳しい内容については触れたいことも多いのだが、ここで論ずるのはやめときます。

しかし、commodity の最近の volatility の高さには驚く。WTI先物はここ1ヶ月、ただ一瞬を除けば100ドル±10%程度で落ち着いている感もあるが、一向に動きが予測できない。実需の面で考えてもスペックの面で考えてももうしばらくは大きく下がることはないというのが個人的な感覚です。長期的には commodity につぎ込まれている資金ははじけるんだろうけど…
 

2 comments:

tmori said...

NBonlineで毎週楽しみに読んでたよ~。もう単行本になってるんだ!
ロシア中国絡みの案件では今後も色んな人が苦労することになりそうだね。
石油に限らず鉱物資源の確保はこれからどうなっちゃうんでしょうか。

Leolio said...

NBonlineで読んでたとはさすがだね~w
あまりのリアルさに笑ってしまった。。

ロシアには行きたくないな…
政治はアレだし、寒いし。

そういえば前に『選択』かなんかで読んだ気がするけど、インドは賄賂が半端ないらしい。日系企業もかなり苦しめられているとか。。