Wednesday, October 17, 2007

歴史を感じる名作たち

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①人間失格 <太宰 治>

「恥の多い生涯を送って来ました。」 に始まり、 「ただ、一さいは過ぎて行きます。」 と終わっていく… 太宰の実人生を元にした壮絶な作品。 読む人それぞれいろいろなことを思うだろう。 わからないようで、実はすごくわかる。 そんな感覚を抱くかもしれない作品で、読むとなんだか瞑想にふけってもみたくなる。
「桜桃」も同時に読んだ。

②変身 <フランツ カフカ, Franz Kafka>

文学史に残る傑作といわれるカフカの変身を読んでいないのも惜しいと思われて、手にとってみた。 冒頭の
「ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると、ベッドのなかで自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついた。」
はあまりにも有名なフレーズ。 こんな状況設定の下、人間の不安と孤独を描いた作品。 結末を知らなかっただけに、どうなるんだ、どうなるんだ…と読み進めたが、なんとも後味の悪い終わり方。
「ある戦いの描写」もそうだったが、カフカの文学はなかなか、今の文学にないような独特の風合いをもっているという感じだった。


羅生門,鼻,芋粥 新装版 <芥川 龍之介>

芥川龍之介の比較的初期の短編集。 羅生門、鼻、蜘蛛の糸ぐらいしか読んだことがなかったので、興味半分、教養のためというのがもう半分で手にとってみた。
contents
①老年
②ひょとこ
③仙人
④羅生門
⑤鼻
⑥孤独地獄
⑦父
⑧野呂松人形
⑨芋粥
⑩手巾
⑪煙草と悪魔
⑫煙管 
⑬MENSURA ZOILI
⑭運
⑮尾形了斎覚え書
⑯日光小品
⑰大川の水
⑱葬儀記

時代背景や文学的知識の不足により、なかなか解釈が難しいものも含まれていた。 しかし、テーマが明確で読みやすいというか、短い文章の中に芥川的感性が詰め込まれてあるのを感じることはできた。 中でも、⑨芋粥、⑪煙草と悪魔、⑫煙管、⑬MENSURA ZOILI はなかなか面白かった。 英文科の卒業だけあって、この時代にもかかわらず、文章中で英語が部分的に使われることもあり、驚いた。 あとは、意外にも、「夢オチ」に近いような作品があることにもビックリ。
 

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