Thursday, January 10, 2008

下流社会?

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下流社会 新たな階層集団の出現 <三浦 展>

評判は散々だったが、人の意見は人の意見。部数は出た本なのだから自分でも一応読んでみようと思って後れ馳せながら購入。
しかし、やはり何ともぼやけた本だった。そもそも本書執筆の目的が読者には伝わりにくい。 上司にリサーチしてこいと言われて、短期間で片っ端からデータを集めてそれなりの推論をしたというような感がある。

著者はマーケティングに従事されているということだが、もっとそのスタンスを全面的に押し出して書いた方が誤解は少なかったのではないかと思う。「下流社会」というシンプルながらやや sensational な題名と新書という組み合わせ、さらには前半の入り方によって、本書は単に社会現象をとらえた本として読まれうる。そうなると、本書を読んだ人は「自分はそうじゃない」だとか「根拠のない階層分けをするな」などと感じてしまう。データはサンプル数も少なく、推論も筆者の偏見がかなり入っているので当然だ。
この本はどう見てもマーケターサイドの本なのだ。だから大雑把なトレンドが掴めればそれなりに意味があるし、階層意識というあやふやな基準も役に立つ。ビジネスではそうやってターゲッティングをしていくものだ。(もっとデータはしっかりとるだろうが)
要は読み方さえしっかりすれば、全部がいらぬ情報というわけではなく、読者各々が得られるものも少なくはないはず。
とはいっても個人的には一冊の本としては駄作の判を押さずにはいられないが…


本書全体の話とはあまり関係はないが、P233の
『最近の新入社員といえば、小学校「お受験」が大衆化した世代の最初の世代であろう。小さいときから「選ばれた」人たち、自分と同じ階層の人間としか付き合ったことのない若者が、社会に出てきたのだ。』
という部分には共感するところがあった。これは主に東京の話なのだろうが、僕自身感じていることだった。筆者が危惧するこうしたタイプの人の中には、貧弱さを感じずにはいられないような人が確かにいる。早期受験や一貫教育などにメリットはあるが、同時にこういう問題も生じていることに親は感付かなければならないだろう。
 

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