------------------------------------------------------------------------------------
“GeneTree”をご存知?
http://www.genetree.com/
「遺伝子SNS」とでも言うのが妥当だろうか。
去年の10月にできたサイトで、遺伝子的な「つながり」、「近さ」を key として交友を深めようというもの。
同サイトを立ち上げたソレンソン分子系図学財団(SMGF)関係の責任者は、
『 GeneTree では、美しく文書化された家系図という価値あるものを残せるのと同時に、友人や遠い親せきとの楽しく感動的な交流方法を提供する』と述べている。
SMGF は4000万ドルほどの費用をかけて、世界の9割にあたる172ヶ国でDNAのサンプリングを行ってデータベースを作成したのだという。そこから導き出された系図を用いて、そして、さらにユーザーの情報を付加することで、ユーザーが遺伝系図内のどこにポジショニングしているのかを分析し、結果を通達する。ユーザーはその情報をもとに、どのような人が自分と遺伝子的に近いのかを知り、交友関係を広げることができる。一味変わったSNSなのだ。
参加者もなかなか多いようなのだが、僕はどうも気が乗らない。というか個人的には非常に危険なものに感じる。
サイトの説明では、positive なことばかりを前面に出している。
例えば、『憎しみや偏見は周りの環境によって生まれたもの(もともとは遺伝的にはつながっている人間同士)。』だとか、『みんながつながっているという気持ちが大切。』などだ。
確かに、こういう考え(反差別、反戦争…)は素晴らしいものだと思うし、僕も大いに肯定の立場なのだが、実にあやしい。
ユーザーは頬の裏からDNAをとってソレンソン・ゲノミクス社に送り、有料で検査してもらうことができるようになっているのだが、危険性についてはさしたる説明もなしに「安全」と言い切られていて、むしろ検査を推奨しているようにも見える。
「個人情報は漏らさない」とはしているが、遺伝情報というのは暗証番号やIDなどとはレベルの違う危険性をはらんでいる。個人にとって遺伝情報というのは言わば情報の「最後の砦」なのだ。
セキュリティシステムは数字や文字などの簡単なものから徐々に生物学的個体に固有のものを利用するように進化をとげている。キャッシュカードを例にとっても、暗証番号⇒ICチップ⇒指紋……というようにセキュリティは高度化している。顔認証、静脈認証などの認証技術も進んでいる。その行き着く先はどこだろうか?現代科学のレベルでは、まちがいなく DNA だろう。
そんな個人にとっての最高機密といえる情報を安易に提供するのは危険だと思うのだ。
今わからないようなことでも、科学の発展によって DNA からわかるようになるというのは想像に難くない。
サイト運営側としては、新しいコンセプトのSNSを人々に提供し、その代わりに遺伝情報を得てデータベースをより良いものにするという“Win-Win”の構図を描いているのだろうが、僕たちはくれぐれも危険性についてよく考えてから参加するのかしないのかその人なりの判断をすべきだろう。安易な考えには警鐘を鳴らす。
ところで、この遺伝系図は母子遺伝するミトコンドリアDNAをもとに作られているらしいのだが、ふと昔に読んだ本を思い出した。「パラサイト・イヴ」だ。確か中学校1、2年の頃に読んだのだが、この本もまたバイオへのいざないとして僕に大きな影響を及ぼした。専門用語の多さにもかかわらず、バイオに対する興味を掻き立てられてしまった思い出の本だ。細胞にパラサイトするミトコンドリアが宿主細胞との共生関係を破り、その関係を逆転しようとする壮絶なストーリーで、素直に面白い。
今となっては注釈を見なくとも用語の意味が分かるのが、なんとも時の流れを感じずにはいられない。
バイオに興味があって読んでいないという方は是非ご一読を。心情描写もなかなか生命科学的です。
Wednesday, January 23, 2008
GeneTree と Eve1
Subscribe to:
Post Comments (Atom)
No comments:
Post a Comment