Tuesday, January 15, 2008

パワー・プレゼンテーション

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パワー・プレゼンテーション <ジェリー・ワイズマン>

“Presenting to Win”
これが原著の題名らしいのだが、邦題がパワー・プレゼンテーションという、何だかかっこいいような悪いようなものになっていることがやや気になった。
何はともあれ、これは勝つためのビジネスプレゼンテーションの指南という目的で書かれたもので、読むまでは比較的テクニック寄りの内容なのかと思っていた。しかし実際に読んでみると、何とも「ゆるい」。このゆるさはいい意味のゆるさで大局的なイメージ。小手先のテクニック解説に傾倒した凡庸なプレゼン本とは一線を画する。
そもそもプレゼンテーションが何のためにあるのか、そして他の伝達手段とどう違うのかなど本質の部分を大事にしてあり、これからプレゼンテーションの技術を磨いていきたい人や初心に戻って自分のプレゼンテーションを改善したい人には非常に有用な内容となっている。分かったような気になる小手先の技術の解説は少ないのだが、不思議とプレゼンテーション作成への姿勢が正される感じだ。

仕事で文章を書くことについては、以前にも紹介した 『理科系の作文技術』 や 『考える技術・書く技術』 といった素晴らしい本があるが、この2冊が大事にしていることは同じで、「読み手のための文章」であるということだ。
同じように、プレゼンテーションは「聞き手のためのプレゼン」であるべきで、ここが一番力を入れなければならないことなのだ。自分たちの主張を理路整然と上手く説明することにだけ集中して作られたプレゼンテーションは自己満足の産物以外の何物でもなく、根本の目的は果たせない。本書はそうした姿勢が滲み出ていて、大事なことを思い出させられる。

著者のつくった言葉で “WIIFY” (ウィッフィー)というものがある。
英語の決まり文句 “What's in it for me?”(自分にとって、何の役に立つのか)をベースにした “What's in it for you?”(相手にとって、何の役に立つのか)というフレーズの頭文字をとったものらしい。本書ではこの WIFFY を大事にする。すなわち聞き手のためのプレゼンテーションであることを大事にしているのだ。
  

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