Thursday, December 06, 2007

南の島の Dog race

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Guam の旅でふと考えたこと。

Guam には政府公認のギャンブルとして「競犬」がある。
月・水・聖金曜日を除いて毎晩開催されているもので、せっかくなのでレースの行われる GUAM GREYHOUND PARK に足を運んでみた。

日本の競馬と賭け方の仕組みは酷似していて、基本的な賭け方は以下のとおり(他に BOX 買いの方法がある)。
・WIN:競馬で言う「単勝」
・PLACE:1頭だけ選び、その犬が1~3着のいずれかに入ればよい
・QUINIELA:競馬で言う「馬連」
・TRIFECTA:競馬で言う「3連単」
・SUPERFECTA:言わば「6連単」…1日に1レースのみ

最小賭け金は1通りにつき $3 からで、SUPERFECTA のみ1通りにつき $2 から賭けられる。
現在時点では基本的にどうやら通常レースは7頭立て。
特別レースの SUPERFECTA 対象レースのみ9頭立てだ。
日本の競馬と同じくパリミュチュアル方式がとられ、オッズは純粋に投票の結果で決まる。すなわち、賭け金の総額から手数料を差し引いた残りが投票の結果をもとに配分されるようオッズが決定する。
良く言えば、そのフランス語の意味どおり「賭け事はお互いに、うちわ同士で」ということになるが、別の見方をすれば胴元が確実に収益を得ることができる仕組みだ。

ところでそのオッズは各犬の勝つ確率を正確に反映しているかといえば NO だ。
基本的にはオッズの低い犬は人気があり、人気が高いということは勝つ可能性が高いとプレイヤー(賭ける人)たちから評価を受けていることに等しい。したがって一番人気の犬のオッズは当然一番低い。がしかし、良く考えてみると犬の勝算を考える上でこのオッズには何ら信憑性はない。なぜなら個々のプレイヤーたちの考えが正しいとは限らないし、プレイヤーの数が少なければ特に、あるプレイヤーの非論理的投票によるゆらぎを吸収する力が投票マーケットからなくなる。これは経済学における完全競争云々の話と同じだ。投票者が犬に対しての十分な情報を持っており、かつ多数存在するとき、その投票によってつくり出されるオッズは各犬の勝つ確率を正確に表すものとなる。Guam のドッグレースがこの「完全」オッズとは程遠いということは見ていて明白だった。まず、犬に対する情報が完全に不足している。プレイヤーたちが持っているのは入り口で配られた適当な予想シートのみ。さらに、勝犬投票券を買っているのは旅行者ばかり。これではプレイヤー各人の予想の集合体はまったくあてにならない。もう一つの要因としてプレイヤーの人数の少なさも明らかだった。ドッグレースはイギリスやマカオなどでも行われているようだが、人口も少ない Guam のレース規模は非常に小さい。

だからこそ、一部のプレイヤーにとってはこのギャンブルは非常に勝てる可能性の高いものとなるだろう。上述のように、プレイヤーたちの主観的確率の結果として表れたオッズは、完全に犬に由来した客観的確率によるオッズとは異なる。したがって、その主観的確率と客観的確率の乖離がチャンスとなるのだ。
理論経済学における合理的期待形成仮説は実際の市場には当てはまることはなく、金融市場のプレイヤーたちはこの乖離を探して利益を出している。ファンドマネージャーの苦労はこの乖離やゆらぎというのがプレイヤーの増加によって減少していることにもよっている。
そういう意味で日本の競馬は非常にプレイヤー不利のギャンブルだろう。 Guam のドッグレースとは規模が違い、投票はネットでもできる。おまけに競馬新聞は比較的細かな情報も提供している。

旅行で訪れただけなので細かな分析はしなかったものの、日本の競馬に比べれば圧倒的に専門的プレイヤーが勝てる状況だった。下手をすればドッグレースで食っていく人が現れてもおかしくないだろうという感想ももった。専門的プレーヤーは精度の高い情報を保持できるよう常に努め、主観的確率と客観的確率との乖離が大きい(=チャンスが大きい)レースに絞って賭けていくのだ。客観的確率の下ではおいしい組み合わせが不当に高いオッズとなっているということは頻繁に起こるだろう。


そんなチャンス満載のドッグレースだが、ギャンブラーたちにとってもう一つ大きな楽しみがある。それが SUPERFECTA で、9頭立てのレースで1~6位まで全て当てるという大博打だ。単純に賭け方の総数は 9P6=60480 通りある。1通りにつき最低 $2 だから、全通り買うとなると、$120960 もかかってしまう。その対価はというと、最低賞金こそ $2000 だが、当たりが出なかった際の賭け金はキャリーオーバーされていく。ちなみに僕が行った日はキャリーオーバー額が $6300 ほどだった。
普通に考えれば圧倒的に不利なギャンブル。しかし、キャリーオーバーの額が $10000 や $20000ともなることもあり、そういうときだけ狙ってみるというのもアリだ。というのも、旅行のガイドブックによると、上述の予想シートの本命は約50%の確率で勝つらしい。したがって、この50%に賭けてその上で、例えばどうしようもない1匹を外すことができれば残り7頭から2~6位に入る5頭を選べばよいので、 7P5×$2=$5040 で買い切ることができる。$5000 を投入してもし50%近い確率で$20000 を得ることができるのなら、みんな飛びつくだろう。

とはいえ、もう一つ難題がある。
それだけキャリーオーバーが発生しているとすれば、このような試みに出るものが他にもいるだろう。もし複数人当たってしまった場合、蓄積額は山分けということになるのだろうから、当たっても元が取れなくなることも十分ありうる。まさにゲーム理論に見られるジレンマなわけです。一人で行けば十分勝算がある。がしかし、複数人が行けばみんなそろって負け。しかし行かなければチャンスを逃す…


世の中うまくはいかないものです。

長くなりましたが、
要は Guam のドッグレースは1回楽しんでみて下さいというところです(笑)
 

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