Monday, November 26, 2007

未来バンクで考える環境とまちづくり

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今日は「細胞を創る会」なる学会で朝早くからお台場の科学未来館にはりつき、その足で夕刻からはとある勉強会に参加した。
「未来バンクの理念とまちづくり」という題目で、presenter は田中優さん。

田中さんは未来バンク事業組合理事長で、有名なのは ap bank の監事をやっていることだろう。

ECOLOGY ONLINE(参考):
http://www.eco-online.org/contents/people/11tanaka.html
ap bank:
http://www.apbank.jp/index2.html

今日のテーマも田中さんが常日頃考えて、取り組まれている内容そのもの。
お話の流れは、やはり環境やエネルギーの話、戦争の起こっている理由など地球規模のレベルから始まり、日本の地域、“まち”がこれからどうしていけばいいのかという話に帰結した。このトピックに対する田中さんの考え方や未来バンクのしくみについては至る所に掲載されているが、今日お話を聞いたことで、ある感覚というか考え方がスッと伝わった気がする。

田中さん自身が明言したわけではなくて、これは今日お話を聞いた上で僕が感じたことなのだが、地球規模での環境問題の改善を目の前の目的として据えることには無理があるのではないかということだ。
これは、もう地球は助からないという開き直りでもないし、環境問題から目を背けるというわけでもない。地球は今本当に危機的な状況にあるし、なんとかしなければいけないという心底の思いは絶対だ。だがその上で、目の前の目的をあえて地球規模の環境問題の改善とはしないというスタンスが感じ取れたのだ。

どういうことか?
もちろん僕なりの解釈なのだが、地球規模での環境問題の改善を眼前の目的にしてしまうと、実現可能性として正直苦しいところがある。だから、それを「結果」にすればいいと考えるのだ。何か、個人にも社会にもメリットとなることをした結果、それが地球規模での環境問題の改善になったという図式があればいいのだ。その「何か」というのが、今日のお話の後半のメインとなった、地域レベルで始めるエコ・システムおよび設備の導入なのだろう。田中さんの考える方法や未来バンクという仕組みを使えば、そうしたシステムや設備によって個人も得をできるし、地域社会も守れる。その結果、国全体としてもエネルギー消費を抑えられるし、戦争などへのお金の流出も減らせる。これが、田中さんが今日本の多くの人に与えている「気づき」だ。
こういうアプローチはいいと思うし、環境と正面から向き合おうとして上手くいかない今、意味のある取り組みだと思う。だからスッと伝わったのだ。

しかし、同時にこの問題はつくづく難しいとも思う。なぜなら、地球にあふれる人間の「個」がどこまでその流れを生み出せるのかという点に非常に不安が残るからだ。
田中さんは金融を支配する複利の仕組みを単利へと変えていかないと持続可能な社会にはならないと説く。そして未来バンク自体もそうした仕組みを目指している。ところが、現在の金融の複利システムは生活の隅々にまで浸透しきっているためなかなか大変なのだ。このシステムの下では未来のお金の価値はかなり小さくなる。現在の1万円と10年後の1万円ではまったく価値が違うのだ。
これによって、エコ・システムや設備は浸透しにくくなる。単利的に考えれば、さらには、未来のお金も現在価値に割引くことをしなければ、エコ・システムや設備によって個人は将来的に利益を得ることができる。例えば、初期費用のかかる太陽発電や省エネ設備は長期的に考えれば、光熱費の削減という利益を生み、これが個人にとって、システムや設備の導入に対する incentive となる。だが現在の複利システムの下、ファイナンス的な考えをすれば、将来生み出される予定のキャッシュフローは現在価値に直せばその額面からは想像がつかないほど小さくなる。この考えの下ではなかなか収益を回収できず、初期投資に踏み切れない人が多くなってしまう。

このような問題は今日は議論されなかったが、僕は大きな障壁になると考えている。
結果的に環境問題に対してインパクトを及ぼすためには、ある程度のスケールで社会や個人の変革が行われなくてはならない。しかし、大多数の個人に変革が起きるためには、相応の incentive が必要だ。これが NPO、NGO 的な活動で達成できるのかということに非常に不安が残る。
一部の人がいいことをやっていても、個をベースとして地球規模の問題に取り組む場合は大人数でやらなければ結果につながらない。

したがって、このような問題は、ビジネスの割合をどの程度にするのか?法律や制度でどの程度押さえるのか?などのバランスが要求される。個人の道徳心や意識に依存してしまうと、どうしても一部の人だけの取り組みになってしまい、地球を変えるだけの大きな渦は作れない。
本当に難しい問題だ…。
考えても考えてもどうすればいいのか分からない。

環境の話とは少し違うが、そういう意味でも前 entry の FreeRice の仕組みはすごいと思う。寄付をしよう!などと個人の意識に訴えなくても、自発的に大きな渦を作れる絶妙なシステムだろう。
 

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